英国

英国逍遥2015 - 「ハムレット」観劇(作成中)

明けて9月12日、土曜日。朝はBBC Breakfastを見ながらコーヒーをいれてのんびりと。

ホテルには綺麗な庭が付いている。 共有スペースの暖炉付きのお部屋も素敵。

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ホテルから歩いて10分ほど、毎週土曜日に開かれるポートぺローの骨董市をのぞいてみた。9時ごろ行ったから屋台のお店はまだ8割がたのオープン。それでも結構なお客さんがきていた。

こんな屋台街がえんえん続く。凄い規模。

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さて午後からはいよいよハムレット観劇。Google Mapさんでルート検索するとSt. Paul駅から歩いて行くのが一番近そう。

聖ポール寺院

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ロンドン博物館。ホームズ展の踊る人形ロゴが残っている。

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バービカン着

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バービカンは劇場、映画館、コンサートホール、美術館に住宅を併設した複合文化施設だ。劇場は地下1階、マチネは土曜だけで13:30から。

プログラムを買い、開場を待って劇場に入る。バービカンは面白い作りの劇場だ。客席の両サイド、列毎に扉がある。通路が無い。1階の席の足元は広いのでそんなに苦労せずに通れるけれど、異国の劇場だし、体調不良等で周囲の人にご迷惑をかけてはいけないので端の席をとった。2回行くので上手と下手の両サイド。これなら見切れはなかろうという魂胆。何れも前列。日本の大方の芝居と違って席を事前に選べるのは本当にありがたい(チケットとるのに数時間かかったけどねw)

チケットは本人チェックをするというので、パスポートを用意していたが、結局チケットを見せるだけで写真チェックはなかった。劇場入り口のみならず、劇場の緞帳(上下に開く面白いタイプ)にも、上演中のスマホ電源オフ、劇場内撮影禁止の注意書きが表示されている。例の盗撮事件があったからだとは思われる。

ここからは舞台感想なのでたたみます。この感想は9/12 ソワレ、9/14 マチネの感想を統合したものになっています。

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英国逍遥2015 - 「バッカイ」観劇

ロンドンに着いて、その夜は観劇という強行軍。体調と相談して無理ならやめようと思っていたけど、早めに着いたしのんびり18時ころ出かける。最寄りの駅はセントラル線のQueensway。駅でオイスターカードにチャージして、イズリントン駅まで30分くらい。駅から10分ほど歩くとアルメイダ・シアター。

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受付で予約メールを見せてチケットに替えてもらう。20時の開演までまだ1時間くらいあったので周囲を散策。劇場前の猫さん。

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イズリントン地区はおしゃれなレストランやバーが立ち並ぶ地区。六本木とかのイメージかなあ。金曜夜だったせいか街は人が多く華やかな印象。こんな中にあるちょっとおしゃれな小劇場。20時開演だからお仕事終わってから出かけても十分に間に合う。仕事終わって、劇場のバーで軽く飲んでからお芝居をみて、終演後は周囲のレストランでちょっとおそめのディナーなんて素晴らしい。ロンドンは演劇の都ですな。

さて開演して劇場内へ。アルメイダ・シアターは客席325席の小劇場。今回はほぼ正方形のステージを三方から囲む形の座席配置。ステージと座席は本当に近くて独特で親密な劇場空間を作り出してる。私は前から2列目に座ったのだけど、前方席はなぜかカップルシート。隣の同年輩の女性に「私たち二人とも痩せててよかったわ~」と言われて「いや~私はちょいデブだけどあなた細いから~(本当にスリムで羨ましかった)」などと言い合っていた。これちょっと恰幅のいい人同志だとかなりきついと思うよ。

観客は去年のリチャード三世(バービカンも)と同様に老若男女まんべんなく。カップルも多い。私くらいの年輩のお客さんも多いので違和感なく客席に溶け込めるのが嬉しいにゃあ。満席。

バッカイ(Bakkhai)はギリシャ悲劇。日本では「バッカスの信女たち」として知られる。

- ゼウスの子ディオニュソス(バッカス)に従う信女たち(バッカイ)。信者を増やすディオニュソスを疑い捉えようとするテーバイの王ペンテウス。ディオニュソスは信女となったペンテウスの母アガウエーを操りペンティウスを殺させ神の怒りを示すのであった -

というエウリピデスが紀元前400年頃に書いた神の怒りによる子殺しの悲劇。神の怒りと愚かな人間との乖離を描いた古代劇でありながら新興宗教と信者の熱狂は現代と通じる。事前に脚本を読んで面白いなあと思っていた。

冒頭あらわれて「我はディオニュソス、ゼウスの子なり」と話し出すディオニュソス。 シンプルなTシャツにジーンズ(神が人間の姿を模しているという記号的な) ウィショー君は細いけどよく筋肉の乗っているしなやかな姿。シャツをめくってちらりと見えたおなかにも筋肉がついていて役者さんてすげーと思ったよ。

バッカイを演じる女優さんたちは人種も年齢もまちまち。冒頭はショッピングバックレディの様にカートを引いたり旅行鞄を持つ現代のいで立ち。彼女たちはコロス(ギリシャ劇における合唱隊。物語の筋を詠唱で補う。歌舞伎の義太夫に似てるよね)も兼ねている。詠唱は時にはグレゴリオ聖歌、時にはケチャやホーミー、アフリカ民族音楽風となり心地よく(内容は恐ろしい)劇場に響き渡る。

バッカイ(コロス)。素晴らしい詠唱。

ディオニュソスやバッカイは登場時こそ現代衣裳だが、すぐに古代ギリシャ風の衣装に舞台上で着替える(時にバッカイは持っていたカートや鞄から衣裳を取り出して着始める)。ディオニュソスは山羊革(フォーンスキン)のワンピース風衣に杖。「神にはありがちな恰好なんだけど~」と着替える姿が可愛らしい。

現代→ギリシャ風装束と着替えるディオニュソスやバッカイと異なり、一貫して背広なのはディオニュソスを敵視するテーバイの王ペンテウス。演じるのはバーティ・カーヴェルさん。チケットとった後で気がついたけど、シャーロックS1E2に登場した銀行マンセバスチャンの人。オリヴィエ賞も受賞している手練れの舞台役者さんでいや素晴らしかった。弁舌も敏腕ビジネスマンのよう。

最初は自信満々に登場したペンテウスは、ディオニュソスにまみえ次第に彼に浸食されていく。このあたりのウィショー君の演技は素晴らしい。時にはにこやかに優しく、時には傲慢に朗々と、厭らしく魅力的にペンテウスを翻弄するのだ。そして時折見せる神としての無機質で無慈悲な顔の恐ろしいこと。

あ、ディオニュソスはロングヘアーなんだけど、いつも髪の毛をひと房、指でもてあそんでいた。あの仕草可愛らしくも色っぽかったけどなにか意味があるのかな?

信女たちのいやらしい饗宴を覗いてみたくはないかとペンテウスを誘うディオニュソス。彼を女装(シャネル風スーツ)させ、口紅を塗って送り出す。ここでいまや信女となったペンテウスの母アガウエーが登場する。ここで吃驚したのはこのアガウエーもまたペンテウス同様バーティさんが演じていたことだ。ひとりの役者が母と息子。殺すものと殺されるものを演じるのだ。これは非常に暗喩的である。

ペンテウスを翻弄するディオニュソスの笑み。怖い

ラスト、血まみれのトーガをひきずり、父カドモスに向かって引き裂いたわが子の首を見せる狂乱の女アガウエーはおかしくて哀れで恐ろしい。嘆くカドモスと正気にかえったアガウエー。灰にまみれた舞台でブルーシートにのせたペンテウスの死体を引きずるバッカイ。

彼らを高みから無慈悲に見下ろすディオニュソスはすでに人の姿ではなく。牛頭となっている(ディオニュソスの本来の姿は雄牛の角を持つ神) 人知の届かぬ獣の姿 - 即ちそれが神の怒りなのであった。

終わってみれば現代の風刺もそれほど強くなく、神の無慈悲さ、人の矮小さが印象に残る舞台であった。即ち本来のギリシャ悲劇のエッセンスを心地よく体験した感じ。

2時間足らずの非常にミニマルなプロダクション。セットも小道具も最小限で、力のある役者さんたちの身一つのプリミティブなパフォーマンスを観てとても満足しましたよ!ウィショー君の人知を超えた神も良かったけど、彼に翻弄されるペンテウスのバーディさんの演技は本当に説得力があった。素晴らしい役者さんたちの生の舞台を堪能しました!


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英国逍遥2015 - 久しぶりのANA(羽田からヒースローまで)

昨年のマーティン主演のリチャード三世に続いて、今年はベネさん主演のハムレットを観にロンドンに!今年はひとつ大きな問題がありました。それは四半世紀来ずっと使ってきたヴァージン・アトランティックの日本直行便が廃止されてしまったということなのだ~!

てなわけで今年からはANAのビジネスクラスにしましたよ!羽田からの出発で使いやすいし、機内食もなかなかおいしい。英国ドメスティックのVAと違ってヒースローの扱いは悪いだろうことは予想できたけどとりあえずチャレンジしてみましたよ。

ラウンジは前回シンガポールに行ったときに紹介した感じで。 複数の路線対応なのでひろびろとして綺麗。

ボーディング。座席はそこそこの広さだけど、広いサイドディスクが付いているのが嬉しい。モニタは17インチのタッチパネルでUSBや普通のコンセント充電もついている。

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ファーストクラスとの間のカーテンw 降りるときにちらっとみたらファーストクラスはビジネスクラスの座席をゆったりさせた感じ。ディスプレイも大きかった。

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エンターテインメントは充実。映画はAoU、Spy、マッドマックスを観ましたよ。Spy面白かった~。ジュード・ロウとジェイソン・ステイサムのずっこけスパイコメディ。ステイサムはコメディ演技もうまいなあ。

ANAのお食事はたぶん世界のエアラインでも屈指のおいしさ。どれも美味しかった~。

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あと面白かったのは、WiFiが使えること。衛星ネットワークを利用した無線LANサービス。最初の15分は無料。まずルーターに接続して、オンラインサインアップ。クレカでチャージして使う。19$で無制限(100Mの帯域制限あり)というのでやってみた。ときどき切れるしそんなに速くない(上下のベストエフォートは492kbps) 面白がってツイッターやLINEをやってたら1時間くらいで使い切ってしまった...こんな感じ。すごいよね~。

などといろいろ楽しく機内で時間をつぶしたり寝たりしているうちにあっという間にロンドン着。ヒースローはターミナル2(スターアライアンス専用ターミナル) 2012年に改築されたばかりで新しいけど、駐機がサテライト部分なので入国ゲートまでは10分ほど歩く(動く歩道+エスカレータ)のが難点かな。VAのアッパークラスとは違ってファストトラックが適用されなかったけどそんなに混んでなくてすぐに入国審査を受けられた。昨年は圧迫面接の様な審査官にあたってしまったけど今年は酷く簡単で拍子抜け。

「どこから?」日本
「五日間滞在?」そう
「なにするの?」芝居観る。あとプロムス・ラストナイト
「ロイヤル・アルバート・ホールで⁉︎」
いや、パーク、ハイドパークで
「そうかあ(ハンコぽん)」

こんな感じ。簡単だった~。空港で両替してタクシーでホテルまで。

今回のホテルはVancouver Studios。ハイドパークのすぐ北、ノッティング・ヒルにほど近い場所にあるリーズナブルな小ホテル。ロンドンでこんな格安のホテル(1泊シングルで97ポンド)に泊まったことはなかったんだけど、予約の時の対応もよかったし、なにより評判が良い。

フロントは24時間空いていて良い感じ。お部屋はシングルで狭いけど、キッチンには湯沸かし、シンク、大きめの冷蔵庫、IH調理器、電子レンジ、カトラリー一式揃っていて不自由は無い。トイレとシャワーブースもあって完ぺき。無料Wifiも完備といたれりつくせり。ただシングルルームは3階(英国で4階)、階段なので上りはちょっとつらい。

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荷ときをして早速出かける。20時からアルメイダ・シアターでベン・ウィショー君主演のギリシャ悲劇「バッカイ」を観るのだ!

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英国逍遥2014:目次

2014年8-9月の英国旅行記です

英国逍遥2014 -1日目: ロンドンへ!

英国逍遥2014 -2日目: Proms!

英国逍遥2014 -3日目: Martin! Martin!

英国逍遥2014 -4日目:Richard! Richard!

英国逍遥2014 -5日目:さよなら英国

過去の英国旅行の記録

英国逍遥2013 - カーディフとロンドン

英国逍遥2007 - スコットランドからイングランド

英国逍遥2005 - コーンウォールとデヴォン

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英国逍遥2014 -5日目:さよなら英国

さて、いよいよ最終日。昨日VA日本便撤退という衝撃の事実を聞いたばかりなので、これは最後のクラブハウス(VAのヒースローのアッパークラスラウンジ)を楽しむしかないと、はやめにホテルを立ってタクシーでヒースローへ。

第四ターミナルにはヴァージン専用のウイングがある。

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アッパークラス専用カウンターでチェックインしたらカウンター横のエレベータで2階に上がってそのまま荷物検査に出国審査。待たされることも無く一瞬で出国できる。

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大好きなヒースローのアッパークラス専用ラウンジ。ヴァージンクラブハウス。世界の名作椅子が揃ってる。

大型ディスプレイではマレーとジョコビッチの全米オープンのリプレイ。マレーが負けちゃったので英国がっかりだ。エッグベネディクトとシャンパン。

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ご飯を食べてちょっと落ち着いたので、ターミナルの免税店をひやかしに。WHSmith(コンビニ)でベネさん表紙のGQマガジンとアンドリュー表紙のattitude(ゲイマガジン)を買いましたよ。

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時間が来たのでボーディング。行きはそこそこ混んでいたけど、帰りのアッパークラスは結構空いてて真ん中一列開いていた。撤退もむべなるかなという感じかなあ。しかし惜しい。

ディナー。メインはチキンのサンガ焼きだっけな。ごはんに乗ってて美味しかった。帰りの飛行機でお味噌汁飲めるのがうれしくってねえ。

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朝ごはんに滞在中はじめてイングリッシュブレックファスト。私は普通朝ごはん食べないので、これが今回初めてのイングリッシュブレックファストになりましたよ。さよならヴァージンアトランティック。英国との11~12時間の距離をいつも楽しく過ごせたのは本当に有難かったよ。

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英国逍遥2014 -4日目:Richard! Richard!

今回の渡英の目的「マーティンのリチャード三世を観る!」「マーティンに逢う!」という目的を達してほわほわしながら起きたら衝撃ニュースが!

ヴァージン アトランティック航空 路線ネットワークの強化計画と顧客満足度向上のための投資計画を発表

なんと20年来利用してきたVA便が日本路線を廃止してしまうという衝撃ニュース!思えば英国に出張した折にJAL、ANA、VAとそれぞれのビジネスクラスを利用した結果、ファーストクラスを持たないVAはビジネスクラス料金でファーストクラス並みのサービスを受けられるというのが大変に気に入り、以来プライベートの渡英はずっとVAのアッパークラスを利用してきた。アメックスのポイントをマイレージに交換し、アッパークラスの無料航空券に引き換えて数年毎の英国旅行をリーズナブルに楽しんできたのだ。

それが終わってしまう。次からの英国旅行はどこのエアラインをつかえば良いのか頭が痛い。

まあ、それはともかく本日は1日使えるラストデイ。ソワレの舞台まで何も予定はないので気楽にすごすぞ~とのんびり出かける。

徒歩でレスタースクエアを通る。オデオン座の前に人がたくさん集まってる(実はこの時、ロンドン国際映画祭のオープニングがTIGと発表されていたそうで...orz)

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ツイッターのフォロワーさんにお教えいただいた本屋さん、Foylesに行く。近代的な作りで英国らしく芝居の戯曲(と舞台DVD)が揃っている良い本屋さん。個人的に受けたのはグランドフロアの半分くらいが料理本コーナーになっていて、レシピ本も充実。なんとお弁当レシピ本コーナーにはお弁当箱まで。あなどりがたし英国w

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その後は近くのロンドンいちのヲタクショップForbidden Planet(禁断の惑星)へ。ここは何度も来ている世界でも有数のヲタクショップだ。10時の開店ちょっと前についたらすでに行列が!

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英国のヲタクショップらしく、ドクター・フーグッズが充実。若干だけどSHERLOCKもあった。大好きなAdventure Timeのレモングラブ伯爵のTシャツが欲しかったんだけど配色がいまいちでパス。

ドクターフーのクリスマスジャンパー。これもちょっと趣味じゃないなあ。

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結局ドクター・フーのポスターや小物を買うなどw

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午後は改装されたばかりの帝国戦争博物館へ。20年以上前プライベートではじめてロンドンに来た際に改装前の帝国戦争博物館を訪れたのだけど、体調不良になってしまい1階のベンチで休んでたので観ることがかなわなかった(夫は観た)のでリベンジ。

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フロアは第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦(とスパイ戦)時代、中東戦争から現在と、連綿と続く戦いの記録とエビデンスが展示されてる。最上階はホロコーストフロア。写真禁止だったけど第二次世界大戦フロアにはエニグマも展示されてたよ。敵国の遺物展示も多く、日本軍の寄せ書き日の丸や軍刀、別フロアには広島の原爆関連の展示もあった。

第二次世界大戦のフロアでノルマンディー上陸時の実録フィルムが上映されていた。激しい攻防戦。横たわる死体。進軍し力尽きて倒れる多くの兵士たち。シビアなフィルムを観終わって振り返ったら、後ろに大勢の感極まった表情の老いた白人男性が佇んでいて - ちょっと来るものがあったよ。

さて「リチャード三世」ソワレ。今日は最前列下手側。椅子の背には血糊よけの黒い長そでTシャツがかかってる(着るのは2幕目から)。 隣に座っていたカップルはスペイン語を話していて内容はわからなかったんだけど「Cumberbitch」だけは聞き取れましたよw

Trafalgar Studiosの最前列は目の前50cmが舞台空間。しかも段差が無いから地続きってのが素晴らしい。手を伸ばせば届く距離で俳優さんが演技していて、日常と非日常の境が限りなく無くなっていくわけですな。そして気がつくのは俳優さんの"場をつくる"という才能。彼らは「リチャード三世という場」に生きていて、それは彼ら自身とは全くかけ離れている。憑依...ともまた違うな。役自身を含めた世界の構築。

だから俳優さんは全身どこを切り取っても役になりきっている。指の先まで気を抜いていない。それを目の前で体験する。この体験は本当に貴重だ。

英国は演劇大国だ。ウエストエンドでは毎日のようにたくさんの芝居が上演されている。名だたる世界の名優たちの生の演技を観られるのだ。しかし、その英国ですら若い人の芝居離れが叫ばれている。今回Trafalgar Studiosと演出家ジェイミー・ロイドは芝居を観たことのない若い人たちに来てもらおうと、シェイクスピアの古典「リチャード三世」をマーティンを主演に据えて彼の特質を生かしたスピーディで切れの良い芝居に仕立てたのだ。

シェイクスピアを「奇をてらった演出」で上演するというのはすでにそれ自身が陳腐化している。もう誰も見栄えの新奇さだけではその芝居を評価しないだろう。今回のリチャード三世の各紙の評価があまり高くないのもうなづける。役者の芝居は素晴らしいが、演出の肝である「不満の冬」と1970年代の冷戦を背景とした英国政治の停滞とクーデター未遂事件との関連づけは私には必然性があるとも効果がでているとも思えなかった。

しかしそれを越えてなお、この芝居はたいそう魅力的で素晴らしい。オリジナルの戯曲の台詞・配役をコンパクトにした演出は切れが良く。場毎の転換もスムースでだれることが無い。役者の台詞は明瞭で聞きとりやすく演技も明快で観客に余計な疑問を抱かせない。ゆえに観客の反応が良い。これは楽しい芝居体験だ。

こじんまりした舞台との距離が近い劇場で、手だれの役者たちの迫真の演技を体感できる。そこに生まれる舞台と観客席の化学反応。ブログやツイッターなどで拝見した感想では、海外を含む何人かの方が初観劇で、しかも同じ芝居を複数回観ていた。その結果毎回の芝居の印象が少しづつ異なることを発見し非常に面白がっていた。これが芝居のひとつの醍醐味で、私もこれを知ってから舞台の面白さに目覚めたのだ。

芝居とはひと夜の夢。同じ演目出演者でも同じ舞台はひとつも無い。幕がおりれば役者と観客と劇場がつくりあげた空間は霧散するのだ。だからひとつひとつの芝居が強烈に愛おしい。大切に思う。人生に似ている。

私はこの「リチャード三世」が大好きだ。この芝居に出会えて本当に良かった。

てなわけで、終幕後例によってステージドアでマーティンを待ってたら係の人が「今日はエージェントが来てて一杯やってるから出てくるのはおそいよ」とおっしゃったので、ああ今日もサインは無理そうだなあでも一目だけでもと1時間ほど待ってたら、紺色のハンチングと白いジャケット(暗いので正確な色ではありません)のマーティンが!

とうとうサインはもらえなかったよorz。あ、でもでも30年以上の観劇歴で出待ちってはじめてやったんですよ!わくわくしながら役者さんがでてくるのを待っているのはすっごく楽しかったよ!


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英国逍遥2014 -3日目: Martin! Martin!

英国生活情報など。

交通:ロンドンの移動手段は徒歩か地下鉄。昨年は一日地下鉄乗り放題の1-dayチケットを駆使したけど、今回、当初はもう少し長く滞在するつもりだったし、来年も渡英予定があるのでビジター・オイスターカードを20£チャージして英国政府観光庁のサイトで買っておいた。ゾーン1内なら1日Max8.4£で乗り放題。残高が8£以下になると自動改札通らないので注意。3日目に5£チャージした。カードか現金。現金はお札が使えません。使い方はSUICAと同じでカードいれたお財布を改札にタッチするだけ。バスも同様。本当に便利です。

電話:昨年同様ソフトバンクの海外パケット放題。1日Max2,980円で日本と同様にLINEもツイッターもメールも使えます。空港に着いたら現地提携キャリア(O2かVodafone)に接続するだけ。割高って話もあるけど、私は利便性をとりました。ただし東京と違って地下鉄内はつながらないので要注意。また東京ほどつながりやすくは無く、圏外の場所も多かった。ホテルもそうだったんだけど、ホテル内のFree Wifiが使えたので問題なかった。

スーパー:トラファルガースクエアのホテルの近くには24時間営業のTESCO METROとCo-Operative Foodがあったので大変に重宝した。特にCo-Operative FoodはTESCOとM&Sの中間くらいでお値段も食品の質もお手頃。ただしお酒は夜10時すぎると買えなくなってしまうので注意w

昨日は雨が降って肌寒かったけど、今日はすっかり晴れてピーカン。晴れれば汗ばむほどの暑さのロンドン。

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SHERLOCKのオープニングでおなじみピカデリー・サーカスへ。

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ここで待ち合わせして、行けなくなってしまったマチネのチケットをtwitter経由でご縁のあった現地在住の日本の方にお譲りする。今回当初の予定より1日旅程を短縮したため、あやうくチケットを無駄にするところであった。日本人形のように華奢で美しいお嬢さんが現れたのに吃驚しつつ無事にチケットをお渡しできてほっとする。

そうそう、Trafalgar StudiosのBox Officeは10時オープン。Webでの予約番号と決済に使ったクレジットカードを提示すればすぐにチケットに替えてくれた。

その後はリージェントストリートを歩いてオックスフォード・サーカスへ。私の聖地Libertyへ。夢のファブリック天国。

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ここで新作のタナローンを買う。新作はあらかじめLibertyのサイトで調べておいたのだ。

今年はこれ、Wild Flowers B 。野の花が美しい。メーター22£。いまやサイトで通販できるんだけど配送料が高いからねえ。

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そこから地下鉄でロンドン・ブリッジ駅へ、ここからロンドン橋をわたって、テムズパス(テムズ河畔に設けられた遊歩道。河口からアッパーテムズまで続いている)をぶらぶら歩く。ちょうどお昼時で、ビジネスパーソンの人たちが河畔のベンチでお昼を食べている。日本風のお弁当やお寿司をお箸で食べている人も結構いるんだよ(こちらはお弁当屋さんが普通にあります)

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ウォーキートーキー(ハンドマイクの意)。本当の名前は20 Fenchurch Street.

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ロンドン橋からタワーブリッジを望む

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シャード

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テートモダンとグローブ座、ミレニアムブリッジも

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ミレニアムブリッジから聖ポール大聖堂をのぞむ

そしてグローブ座へ。ここのシアターショップはシェイクスピアの演目別にお土産があるのでリチャード三世のTシャツ買おうと思ったんだけど、独立した演目はハムレット・マクベス・ロミジュリ・真夏の夜の夢・お気に召すまましかなかったよママン..orz

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ハムレット

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ハムレットのスカル50ポンド

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マクベス。血まみれ。

がっかりしながらグローブ座を去りました(うそうそw

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さて夜はいよいよ今回の渡英のメインイベント!マーティン主演ジェイミー・ロイド演出の芝居リチャード三世だ。8月半ばにマーティンが体調を崩して(腰を痛めたとのこと)休演(代演)が続いてたいそう心配した。何せ3か月の長丁場。その後マーティンの負担を減らすような演出に変更されたとのことだが、実際舞台ってナマモノなので、本当にそのキャストで見られるかは日本でだってわからない、ましてや渡英までして見る舞台は本当に賭けなのだ。複数回押さえておいたのもそのためだった。

とまれ、休演のお知らせも無く19時過ぎにホテルから徒歩1分のTrafalgar Studiosに赴いた。開演は19:30。開場はだいたい19:20くらい。ま、小さい劇場だからね。ここに限らずにウエストエンドの劇場はまさに芝居小屋の趣。座席は急傾斜で席のサイズ・間隔も決して広くは無い(のは何回か英国の劇場で芝居を見ているから知っている)。私の席は前から4列目の舞台下手。目の前にセットの一部である机が置かれている。左隣の女性はかなり大きくて私の席の1/3くらいまではみ出してしまいかなり恐縮されていた。

人気のマーティンの舞台だからファンガールが多いのかなあと思ったら、前夜のロイヤル・アルバート・ホールのコンサートで見たような年配のお客さんも多く、英国の演劇観客層の幅広さを感じた。

芝居の感想は以下羅列。ネタバレには躊躇しないのでご容赦ください。


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英国逍遥2014 -2日目: Proms!

明けて翌朝。英国で迎える9月ははじめて。

早速備え付けのコーヒーメーカーに粉をセットして、こちらも備え付けのコーヒーカップに入れようと思ったらサイズがあわなくてこんなことに。まあ斜めにすればなんとか。この大雑把が英国。私には合っているww

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今回の滞在は正味3日間。実は夜しか予定を入れていない。適当に街をぶらぶらしていようと思ったからね。ただしウエストミンスター寺院だけは見に行こうと思って事前にバウチャーを手に入れておいた。ヨーク・ミンスターとカンタベリー大聖堂は訪れているのでこれでコンプリート(何が?)

トラファルガー・スクエアからウエストミンスターまではパーラメント・スクエアを抜けて徒歩15分。
昨年行ったホースガーズを抜けて行く。

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ウエストミンスター寺院の正面入り口は大行列。

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ここで笑い話。チケット売り場で英国政府観光庁サイトで買ったバウチャーを差し出したところ、係の人がそれを見て大笑い。「ごめんなさい。私には中国語が読めないのよ~」と返された。私もうかつだったがこのバウチャー全て日本語で書かれているのだww こんな感じ

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「これは中国語じゃなくて日本語。私もわからないけど、このバーコード読めばいいんじゃないかな(右上にバーコード印刷)」と言ったところ無事通過しました。英国政府観光庁さんは現地係員への指示くらい英語で書いておいてほしいなあと思ったよ。

寺院内は撮影禁止。美しい中庭と回廊。

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ウエストミンスター寺院は多くの王族・偉人が埋葬されている巨大な英国の霊廟だ。もんのすごい因縁を豪奢なカテドラルで浄化してるんだなあと濃ゆい霊気にあてられてしまったよ。

私が英国史に興味をもったきっかけはエリザベス1世とスコットランド女王メアリー・ステュアートの因縁だった。中学生の時に夏休みの自由研究にしたのだ。麹町のブリティッシュ・カウンシルまで行って資料を借りて調べたよ。

ウエストミンスター寺院のエリザベス女王の墓の正反対の位置にこのメアリー女王の墓がある。息子であるジェームズ1世が即位後に建立したのだ。死んでからもなお対立する二人の因縁が感慨深い。建国以来憎み合い殺し合い愛し合いながら連綿と続く英国王室の業の深さを体現しているのがこのウエストミンスター寺院なんだなあと思ったよ。

夜はBBC Promsに。英国の夏はプロムナード・コンサート(Proms)の季節。7~9月の間、各地のコンサートホールや野外で気軽に立ち寄れるクラシックのコンサートが開催される。提供はBBC。最後の夜はロイヤル・アルバート・ホールを中心に英国にゆかりの楽曲を演奏するプロムス・ラストナイトが開催される。昔から一度、このラストナイトのコンサートを実際に観てみたいと思っていたのだ。

BBC Promsのサイト

Promsラストナイトの様子

ラストナイトは無理にしても滞在中にとれるチケットは無いかなと探したところ日本でも人気のデュトワ指揮によるローマをテーマにしたコンサート(Roman Holiday)のチケットがとれた。常のクラシックコンサートと違いPromsはカジュアルでも問題のない気軽なコンサート。でもちょっと気張ってニットのワンピースを着て出かけた庶民w。

ロイヤル・アルバート・ホール。ロンドンのクラシック・コンサートの殿堂。

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さてとった席はLGxx (Loggia Seat#1)とあった。とった時点であまり席の選択の余地は無かったんだ。ロイヤル・アルバート・ホールの係の人に席案内を頼んだら、ホール外周に向かった。この外周は扉が並んでる。ある扉のところでちょっと待っててね~と行ってしまった。扉は鍵がかかってる。やがて鍵の係の人がきて開けてくれて席はここだと。なんとボックスシートだったのだ。ええっ、こんな豪華な席~!と驚いていると係の人はにっこり笑って「非日常を楽しんでね~」と。すげえ非日常!

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バーもついてる。ボックス内の席は8席。私はいちばん手前、隣の席にはカップルが、後ろの席には3人連れのお客さんが座ってゆとりの配置。プロムナードコンサートなのでカジュアルな服装のお客さんが多かったけれど、ボックスシートに座ったお客さんは華美ではないけどそれなりにおしゃれしている。私もワンピースで本当に良かったと思った。プログラム(4£)を読んでいたら、他のお客さんからそれいくらなの?どこで売ってるのなどと話しかけられ和やかに会話。いいにゃあプロムナードコンサート!

閑話休題。過去にブログで何度か書いているけれど、私は歌舞伎座や演舞場の桟敷席が大好きだ。幕間にお弁当とお酒を届けてもらってほろ酔い気分で芝居を見るのが気持ち良い。それがボックスシート。贅沢で素敵な空間をまさか英国で体験できるとは思わなかったので本当にうれしかったよ。

ボックスシートからの眺め。最高!

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幕間にワインを買って飲みながら鑑賞

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ロイヤル・アルバート・ホールの音響は素晴らしく、音のまとまりがとても良い。デュトワの操るロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏がまるでひとつの楽器から流れる音のように響いていたよ。

コンサートはRoman Holidayがテーマ。ウォルトンの協奏交響曲がピアノとの調和が素晴らしい。また主題のレスピーギはローマの松目当てだったけどローマの祭りも良かった!時に雅楽を感じさせるんですよ~。もう拍手喝采の素晴らしいコンサート。わたしもボックスシートから心ゆくまでブラボーと叫んだよ。

夢のような時間を過ごしましたよ。来年は絶対ラストナイトを観にこようと誓う

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英国逍遥2014 -1日目: ロンドンへ!

さて、昨年に引き続き英国に。英国にプライベートで通い始めて20余年。ビジネスならともかくプライベートで一人旅というのは初めてだ。理由はおいおい語るとして今回はロンドンのみで正味三日という気楽な旅なので、スーツケースも小さめで国内旅行の趣。

でも成田は遠い。リムジンバスで成田まで2時間弱。来年からは羽田を使うことを固く誓う。

成田のVAカウンターは8:15に空くんだけど一番乗りでありましたよ。閑散としたラウンジでのんびりする。エッグベネディクト(メジャーになったねw)とシャンパン。

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アッパークラスのフラットベッドで12時間。11時発、同日15:30着。1年ぶりのロンドンの空。テムズ、タワーブリッジ、ウォーキートーキー、シャード

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久々に一人で入国審査。ここで自分史上もっとも厳しい審査官にあたってしまい。各項目についていちいち説明を求められて四苦八苦してしまった。通常は観光で夫と二人なので2,3の簡単な質問で通してもらえるのににゃあとちょっと憂鬱に。

とはいえ、ヒースローからタクシーで30分。ロンドンはトラファルガー広場に面したホテル。The Grand at Trafalgar Squareに無事チェックイン。クラシックな佇まいの豪奢なホテルだけど実態はビジネス向けホテル。Freeで高速無線(有線も)がついてたいへん使いやすい。キチネット付。ただしシャワーのみでバスタブは無し。湯量は豊富だし短期滞在なら全く問題なし。

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机が広い。USB単体の充電口もある。

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キチネット。流し、電子レンジ、コーヒーメーカー、冷蔵庫。カトラリーに食器。コーヒー豆は毎日補充してくれる。
私は朝はコーヒーだけ飲む習慣なので、毎朝淹れたてのコーヒーがセルフで飲めるのは大変に有難かった。

さて荷解きもそこそこにさっそくトラファルガー広場へ。まだぜんぜん昼間の雰囲気。

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そこから徒歩1分ほどの劇場、Trafalgar Studios。ウエストエンドのはずれにある350席ほどのこじんまりとした劇場。ここが今回の旅の目的だ。

愛するマーティン・フリーマン主演のリチャード三世(2014/7/1~2014/9/27)

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楽屋口(Stage Door)

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大好きなマーティン主演のお芝居を観るための渡英だったのでした!チケットはソワレ2回(本当はマチネもとったのだけど、事情で現地の方にお譲りしました)

劇場の位置を確認して、近所のスーパーで牛乳やワインを買って本日のミッションは終了したのでありました。

p.s.

その後ベットでうとうとして目が覚めたら夜の11時頃。つけっぱなしのBBC Twoで「Starter for 10」が!いやあワッツ部長のベネさん大好きなんですよ。主演のマカヴォイ君もすっごく可愛いし、アリス・イブちゃんは空気読めない軽い女の子だけど可愛いし、なによりヒロインのレベッカ・ホールちゃんがけなげでしっかり者の良い子なんですよ~後のスター俳優を多くフィーチャーした青春映画で大好きです。ゲイティス兄もでてるしな!

英国いいにゃあと思いながら眠りにつきました。

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エンドロールの名前が長いベネさんw

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英国逍遥2013 -追記

本文に書ききれなかったことなど落ち穂拾いで

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