映画「ゼロ・グラビティ」感想
いやあ凄かった素晴らしかった「ゼロ・グラビティ」。なんだか本当に私自身が宇宙空間に放り出されたような気がして、映画のエンドテロップが終わった後もしばらく放心状態で立てなかった。
素晴らしい映画を「体験」したよ。まさにExperience!!
この映画はできれば、IMAX3Dで、比較的前の席でご覧ください。冒頭の長回しでいきなり持ってかれます!後は上映時間90分が作品中の経過時間とほぼ一緒なので息つく間もなくラストまで!
映画が終わった時、私たちはタイトル「GRAVITY(原題)」の意味を重く知ることになるでしょう。
ここから先はネタバレで気がついたことなど~、未見の方はご容赦ください。
- 作中ではスペースシャトルがまだ現役。ミッション・スペシャリストのライアン博士がハッブル宇宙望遠鏡のデータ通信システムの故障を修理している場面から始まる。 - とするとこれはちょっと前の設定なのかな?と思ったら中国の宇宙ステーション天宮がある。あれはまだ本格運用されていないので、おそらくフィクションであることを明確に宣言しているのだなと思いました。
- また、スペースシャトル-ISS-天宮-(およびライアン博士・コワルスキー)が同軌道に居るように見える。従ってその間を移動するのに必要な情報は距離だけなのだが、これには「そんな単純か?」とひっかかった。おそらくわかりやすいようにお話を単純化しているのだろう(夫はこのあたり脚本の初稿を見てみたいといっている)。パンフで山崎宇宙飛行士も実際の軌道は三次元になるとおっしゃってた。
- 映画には「2001年宇宙の旅」へのオマージュが随所に見られてちょっと感動する。冒頭の事故場面で宇宙の深淵に吸い込まれかけるライアン博士はまんまHALが反乱を起こすディスカバリーの事故画面だ。無重力状態で浮かぶペン。エアロックシーン、ソユーズの中で胎児のように体をまるめ、そこから天宮に向かって脱出するシーンなどなど。1968年(45年前!)にキューブリックとクラークが提示した宇宙のイメージにスペースシャトル、ISS等実際の経験を加えて最先端の映像に生まれ変わらせているのだ。
- ヒューストンとの通信が途絶えるとき、コワルスキーが「フェイスブックが使えなくなるな」と言ったのにちょっと笑った。今でもISSからリアルタイムで若田宇宙飛行士が素晴らしい地球や宇宙の写真をツイートしてくれてる。このSNSを自在に使う宇宙飛行士ってちょっと前のSFには無かったイメージだ。
- ライアン博士がISSのエアロックで宇宙服を脱いでTシャツと短パン姿になるのは、エイリアンのシガニー・ウィーバーのタンクトップシーンのオマージュなのかな。しかし良く鍛えてる肉体にちょっと感服しました。サンドラ姐さん49才ですよ!
-映画はほとんどサンドラ・ブロックの一人芝居。最初のちょっと覇気のない状況から始まって、絶望の淵に落ちかける諦念する - 自分を鼓舞し前へ進む - そしてラストのあの力強い表情まで本当に素晴らしい!スピードでデビューした時から見てるけど良い女優さんになったにゃ!
- ジョージ・クルーニーのコマンダー、マット・コワルスキーも最高に良い!惚れた!いつもひょうひょうとしていて冷静でオープンマインドで。そしてあの印象的なシーン!彼の再登場では最初からその意味がわかって涙が噴き出して最後まで止まらなかった。夫に「君はああいうシチュエーションに本当に弱いなあ」とあざけられたよっ!でも感動したんだよっ!
- 天宮にはいったとき、卓球のラケットが浮いててちょっと笑った。ISS、 天宮ともステーションが無人だったのはもうひとつのソユーズ・神舟で脱出したんだろうと信じたい。
- ラストで神舟乗った時、計器類が全部漢字で一瞬絶望しかけるけど、ソユーズ丸パクコンパチなんでノープロブレムって、中国怒らないかにゃああww
- 着水した時、ハッチ開けたら水がだーってはいってきておぼれかけるシーンは「ライトスタッフ」のガス・グリソムのシーンへのオマージュと夫が申しております。
- たくさんの宇宙ステーションの破片が地球に降り注ぐシーンはちょっとはやぶさの帰還を思い出しましたな。
- 無事生還したライアン博士が、湖の岸辺に泳ぎ着き、泥を掴み覚束ない足取りでしかし力強く立ち上がる(2001年へのオマージュかな?生命進化も提示してると思う) そこでタイトル「GRAVITY」がばーんとでる!本当に感動した。
- そういう意味では日本のタイトル「ゼロ・グラビティ」ではこのラストが台無しになるのでちょっとやめてほしかったなと思いました。
-でも、ISSも天宮も破壊されちゃって、これからの宇宙開発はどうなるんだああああとちょっと憂いました(フィクションだから...)
- 鑑賞中は気がつかなかったけど、エンド・テロップでヒューストンのオペレータがエド・ハリスと知りまた感動した。エド・ハリス大好きだ!一番最初に見たのはライト・スタッフのジョン・グレン役。そしてヒューストンのオペレータと言えばアポロ13のジーン・クランツ役!本当にリスペクトしてるんだなあと嬉しくなった!
■
冒頭、覇気のなかったライアン博士が、絶望的な状況から生還し、希望に満ちた目で力強く大地に立つ。
この映画で描かれているのは宇宙の怖さ美しさだけではなく、それらを自らの内に収め絶望しかけるも希望を胸に抱き進む人間の素晴らしさ。博士を前へ前へと進ませるその動機は、逝ってしまった娘やコワルスキーへの思いなのだ。それは普遍の人間賛歌。シンプルで力強いメッセージを確かに受け取ったよ!
■
劇中、ソユーズのライアンと交信していた「アニンガ」を描いたショートムービー。アニンガ、イヌイットだったのか。そして遭難信号のメーデーを相手の名前と間違えてたんだねえ。 宇宙に等しい過酷な状況で力強く生きるアニンガとその家族の胸熱くなる短編
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コメント
こんばんは。以前にもコメいれさせていただきましたにこまるです。ゼログラビティ今日観てきたのでこちらを読ませていただきました。するどく的確な考察にいろいろ納得です。映像本当にすごかったですね。最初に博士が回転しながら飛ばされていったシーンではちょっと酔いそうになったほどです。あっという間の90分でした。マットの再登場シーンは私もうるっときちゃいました。地上波から犬の鳴き声が聞こえて博士が犬のまねをするところはライカ犬のオマージュ?なんて思ったりしました。とりとめないですが、とにかく素晴らしい映画でしたね。そして同館です!」私も「ゼロ」いらんやろ!!!って最後に思ったのでした。
投稿: にこまる | 2013.12.15 21:48
同館???同感でした。
投稿: にこまる | 2013.12.15 21:49
にこまるさん、コメントありがとうございます!
にこまるさんも「ゼロ・グラビティ」ご覧になったのですね~。冒頭からすごかったですね。私も目がまわる~助けて~酔う~と思いながら博士と一緒にまわっていました。
マットの再登場シーン本当に目からどっと涙が噴き出しました。そして地上との交信!あのわんこの鳴き声はライカ犬か~ありえますねっ!上記のショートフィルム見ていただくと地上側の交信の様子がわかります。美しくもの哀しくもたくましい風景でこちらも大好きです~。
投稿: nya | 2013.12.16 05:20
タイトルのゼロいらないですよね!
グラビティには無重力、地球の物理的な重力、地球に帰還したいという心を引き寄せる精神的な重力など色んな意味があると思うのですが、ゼロを付けることでかなり意味が限定されちゃいますよね。
にしても良い映画でした!
投稿: カフカ | 2013.12.30 16:52
カフカさん、コメントありがとうございます!
ですです。たぶん語感の座りの良さでゼロをつけたのだと思いますが、おっしゃる通りGRAVITYは無重力と言う意味も含む多層的な言葉であることにタイトルの意味があるので!
でも本当に素晴らしい映画であることには変わりありません。良かったですよね~。
投稿: nya | 2013.12.30 19:11