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ドラマ「SHERLOCK:S1E1ピンク色の研究」感想

注) 初回放映時の感想から独立させました。しかし書いても書いても終わりません。総括と冒頭部分だけ。後は順次追加していきます。

えっと私のドラマ感想はネタバレに躊躇はありません。未視聴の方はどうぞスルーして、そして観てくだされ~。DVDででておりますのでお試しレンタルでぜひどうぞ!面白いよ~。損はさせないよ~。

祝 BBCドラマ「SHERLOCK」 NHK総合地上波初放送!2011年8月のBSプレミアムの放送から1年と半。前評判を全然知らずにNHKの予告に惹かれて観たら面白くって一挙にはまったよ!シャーロック役のベネさんことベネディクト・カンバーバッチはこの作品ではじめて知ったけど、あれよあれよという間にハリウッドに進出し日本でも本年ブレイク必至の新進気鋭の実力派英国俳優さん。最高にセクシーで格好いいよね!

日テレZIP!で放映されたべネさんミニ特集はたいへんにツボを押さえております。

そしてマイ・フェイバリッド英国俳優我らがマーティン・フリーマン!キュートなおっさん萌え(でも私より10歳年下なのだ…)のnyaの心をわしづかみ!キュートだけじゃなくて骨太で男前で格好良いのだ!マイ・フェイバリッド英国SF映画「銀河ヒッチハイクガイド」のアーサー・デントですでにその存在を知ってたけど、あれからいい感じに年をとって、でもキュートさは失ってなくて最高に素敵です。

マーティンの出世作英国ドラマ「The Office」のティムといい、カルトSF映画「ヒッチハイクガイド」のアーサー・デントといい、ハリウッド超大作「ホビット」のビルボといい、彼の役どころは大抵わけのわからない人に振り回される常識人。最初は翻弄され困惑するのだけれど、次第に自分の芯を通し、成長し、周囲を変え、物語をドライブしていくのだ。

「SHERLOCK」のジョンもまさにそう。私見ではあるけれど、ドラマ「SHERLOCK」を「SHERLOCK」たらしめているもののひとつは舞台を現代に持ってきたことでも、ホームズがソシオパスということでもなくドクター・ワトソンの造形にあると思ってる。

従来のワトソン像-ホームズの忠実な友にして彼専属の伝記作家。誠実で勇猛果敢、優秀な医者で心優しい英国紳士 - と基本は聖典の人物像を外していないが、SHERLOCKの制作陣はそこに瑕疵(もしくは影)をつけ加えたのだ。ジョンは軍医として従軍したアフガニスタン戦線で負傷し英国に送還される。彼は戦争によって深く傷つき、PTSDに悩み虚無的な生活を送っている。しかし、シャーロックとの出会いが彼を変え、それはやがてシャーロックをも変えていく。

そしてSHERLOCKのもうひとつの特徴は、彼らが「若い」ということだ。卓越した能力を持つ傲岸不遜な天才探偵シャーロックと相棒ジョンはいわゆるアラサー世代。これも聖典から離れていない設定なんだけど、ヴィクトリア朝の時代であれば十分に大人であった30代も現代ではまだまだ未熟。特にシャーロックは「中身12歳」設定のため本当にコドモだ。利害のない純粋な称賛者ジョンに出会い、はじめてシャーロックは彼を通して外界と有機的にかかわり始める。ジョンの眼を通して見る世界、ジョンの眼を通して見る自分 - 彼は少しづつではあるが自分を省み、人を思いやる気持ちを知り、成長をはじめるのだ。シャーロックの才能に心酔しつつもその稚気に手を焼く大人のジョンも彼の成長に寄与することで円熟を深めていく。SHERLOCKはシャーロックとジョンの成長物語でもあるのだ。

制作者モファットとゲイティスは「SHERLOCK」の根幹は「シャーロックとジョンの友情」であるという。SHERLOCKのS1では彼らの出会いと友情を描き、S2ではシャーロックの人間的な成長を描く。S1E1はシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンが結んだ生涯の友情のはじまりの物語なのだ。

あ、最初にS1の総括感想書いちゃった!シーン毎のレビューもちょこっといれとくよ。

*聖典のテキストはヴァージニア大学eText Center版を引用した。へっぽこ訳はnya。
(Doyle, Arthur Conan .Electronic Text Center, University of Virginia Library)

- タイトルは「A Study in Scarlet(緋色の研究)」から

- 冒頭、アフガン戦線の悪夢に悩まされるジョン。足を負傷し杖をついているが、セラピストからは心因性といわれている。実際、劇中でシャーロックとともに犯人を追いかける際にはジョンは杖を手放しているのだ(以降すっかり杖いらず)。

これは聖典の「ワトソン君の負傷箇所はどこだ!」問題をパロっていると思われる。「緋色の研究」では肩を、「四つの署名」では足を負傷したってやつね。見事な解釈だと思う。

- 冒頭の事件で傘をとりに家に帰ったまま事件に巻き込まれる16才の少年はジェイムズ・フィリモア(画面に映る新聞記事に名前あり)。これは「The Problem of Thor Bridge(ソア橋)」に登場する書かれざる事件「Mr. James Phillimore, who, stepping back into his own house to get his umbrella, was never more seen in this world. (雨傘を取りに家に戻ったまま姿を消したジェイムズ・フィリモア氏の事件)」

- ジョンがもと同僚のマイクに出会い、二人でベンチにすわって飲むカフェラテのカップには「Criterion」と書かれている。これ緋色の研究の冒頭で、戦場帰りのワトソン医師が立ち寄ったクライテリオン・バーでバーツの病院で彼の助手をしていたマイク・スタンフォードにであうという場面をリスペクトしているのだ。

- マイクがジョンにルームシェアをすすめるが、「まさか!誰が僕なんかと!」とジョンは拒否。するとマイクが「おかしいな。今日そういったのは君が二人目だ」と笑う。このマイクの台詞は原作のまま。

- シャーロック初登場。モルグで死者を鞭打ってるという強烈な場面。死後にどれくらいのあざができるか確かめるためだが、これは「緋色の研究」の冒頭でマイクがジョンに語った内容。

- 実験室での対面も初対面のジョンがアフガニスタン帰りであることをあてるのも「緋色の研究」での彼らの出会いのまま。ただし「アフガニスタン? イラク? どっち?」と聞くのは今風だなあ(とほほ)。 「バイオリンは嫌いか?」「考え事があると何日も口をきかない。そのときはほっといてほしい」のあたり含めて台詞はそのまま。

- だけどベネさんシャーロックが真に視聴者の心を掴んだのはこのシーンなんだろうな。高速推理とウィンク、このつかみで世界中を魅了した。

- そしてレストレード警部が221Bに現れる。ブリクストン、ロリストン・ガーデンの空き家で死体が発見される。この事件はまさに「緋色の研究」のはじまり。ただし聖典でそれを知らせるのはレストレードではなくグレグスン警部

- 「やったあ、犯罪だあ、クリスマスだあ!」 つかみその2。クールな天才探偵だと思ったらただのコドモだと分かった瞬間。

- シャーロックはジョンの足がPTSDと見抜き彼の心の虚無の本質を言い当てる。良き英国人ジョンは心の中で冒険を求めていたのだ。事件現場に勇んで出かけたシャーロックを内心忸怩たる思いで見送るジョン。しかしシャーロックは戻り彼を戦場に再びいざなう。戦地で一生分の傷病兵や死体を見てもう十分だと言うジョンに彼は言うのだ。「Wanna see some more? (もっと見たい?)」と、ジョンは「Oh God, Yes!(見たいともさ!)」と答える。この瞬間から彼らの冒険ははじまるのだ。

(中間作成中)

- シャーロックが自分を救ってくれた人物の高速推理過程でジョンだと気づく。強いモラルと銃の腕、鋼の心を持った最強の友人を得た彼の幸運と不運。犯行現場で笑っちゃだめよ。

- コンビ誕生の瞬間。ゲイティス兄はこのシーンの台詞が言いたいためにドラマの企画立てて自分をマイクロフトにキャスティングしたのでは? でもパイロット版ではレストレード警部の台詞なんだよね。

BBCドラマ「SHERLOCK」感想および情報目次


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コメント

nyaさん
またまたこんにちはー。日本では地上波放送が始まったのですね。素晴らしい解説をありがとうございます!

SHERLOCKの成功がジョンの造形と2人の若さにある、というのはまさしくその通りだと!
nyaさんは米国ドラマ「HOUSE,MD」をご存知でしょうか?この主人公ハウスもシャーロック・ホームズ(聖典の)を元に造形されています。この型破りな天才医師はシャーロックがかわいく見えるほどの(笑)ソシオパス。シリーズ8年間のあいだには精神病院そして刑務所送りになりました。そんなハウスにとっても最後の救いは親友の存在だったのですが、その救いが遅すぎたのは、やっぱり彼らの年齢だったと思うんですね~。
しかし我らが天才探偵は人生これから、という時期。そしてジョンが彼の単なる助手という名の付属品でなく、共に人生を生きる人間として対等の立場を獲得したときに、このドラマの成功は決定したように思います。

ああ~、コメント欄で長々と語ってしまい、申し訳ありません~。おーみやとしては「このドラマの成功はジョン役にマーティンを起用したところ!」と言ってしまいたいですが(笑。マット・スミス氏だったら、いやそれはそれで面白かったかもしれないんですが。

投稿: おーみや | 2013.01.17 05:25

おおっ、NZのおーみやさん、コメントありがとうございます!

そうなのです!日本では今週から毎週火曜深夜にS1のNHK地上波放送開始なのでついはりきってしまいました!放送の評判は上々、ご新規のファンも増えたみたいで嬉しい限りです!

「ドクター・ハウス」ですね。評判は知っているのですがまだまとめてみたことはないのですよ~。

S2のライヘンバッハ・ショックがずっと尾をひいているのですが、S2のブルーレイでモファットさんが「彼らの一生の友情ははじまったばかりなんだ」とおっしゃっててすごく救われたんですよね。S3での再会と更なる彼らの成長がとても楽しみです!

コメント大歓迎です~どうぞ語ってくださいね!ロンドン・ファッションウィークでマットとべネさんが肩組んでる写真あったのですがこの2人似てますよ~。マットがジョンだったらどんなお話になったんでしょうねえ。でもやっぱりSHERLOCKのジョンはマーティンですんね!

投稿: nya | 2013.01.17 16:01

はじめまして!
いつもブログとついったを楽しく拝見しております。
べネさん礼賛のサイトが多い中、nyaさんのご意見にはまっったく同意で、
安定のマーティンクオリティがいつも素敵です。
これからもよろしくお願いしますw

ところで今回のエントリの
最強の友人を得た彼の幸運と不運
に何かグサッとされたので初めてコメントさせていただきました。
とってもいいですね。
ジョンがなまじ鋼の心を持ってしまってるから、頑なだったシャも変えられちゃって
シャはまんまと(ほかの人間と同じように)弱点を抱えてしまいましたね。
弱点があるのは悪いことではないと思いますけど、シャはそんなもん欲しくなかったんだろうなーと。
今更手遅れ(´ー`)

ふたりが何に出演してても、結局シャーロックに戻ってきてしまいますよね^^
シャーロックファンしつこいw

投稿: はり | 2013.01.18 09:35

はりさん、はじめまして!コメントありがとうございます。

こんな辺境のブログにようこそお越しくださいました。ツイッターの方でもお世話になっております。今後ともぜひぜひよろしくお願いいたします。

はい~シャーロックは「心がない」のではなく、そうあるように自分を律していたのだと思います。でもジョンがその頑なな心を溶かしてしまい、そこをモリアーティにつけこまれてしまったのですよね。モリアーティはジョンのいないシャーロックだったのかもしれません。

でも私は弱点があるから人なのだとも思います。弱点があることでより人は強くなる - シャーロックは結局はモリアーティに勝つのですからね。

マーティンがホビットでベネさんがSTIDでもやっぱり私たちそこにSHERLOCKを見てしまいますよね~S3はやくこい~。

投稿: nya | 2013.01.18 22:14

こんにちは!

はああ~楽しい!読んでいて楽しいww
素晴らしい解説と愛のある視点で、読んでいるだけでピンク研究を一通り見たかのような感覚に浸りました、ああ幸せ(^u^)ありがとうございます。シャーロックはファンを魅了してやみませんね。最高です。

マーティンいいですよね。ホビットを堪能してますます彼のファンになりました。

ビルボもジョンも、自分の新たな一面を知っていくような、役でしたよね~。そしてそれまではあたかもそこから目を背けていたのでは?と思わせるような一面もあり…
私思うんですけど、どうしてビルボって結婚してないのかなって。ありゃどうみてもおっさんホビットですが、家庭をもっていない。あんなかわいいホビットは女どもが放っておかないだろうというのは勝手な推測ですが、どことなく、ビルボって「自分はこれでいいんだ」みたいに成長することを放棄しているように見えます。
でも、人間は他者と関わることでしか成長できない部分が多いし、他者と関わることでしか味わえない充足感がある、で、そういう深層心理で自分に足りないものを求める気持ちが、ビルボを冒険に駆り立てたのだと、ただトック家の血が騒いだだけではない、心の成長を求めるビルボ自身の隠れた欲求であったと、思うのです。
あ、シャーロックのことを書こうとおもって思い切りズレました……w
シャーロックって一見ミステリーかと思いきや、人間ドラマですよね。ほんとふたりの友情が大好きです。

投稿: aiko | 2013.01.20 14:10

aikoさん、こんにちわ!コメントありがとうございます。

すみませんすみません!拙い(しかも未完の)感想を書き散らかして。でも愛だけはたっぷりあります~。

ビルボが結婚していないのは謎ですよね。たぶん独身貴族(あ、ジョンといっしょだ)なんだと思います。原作のビルボはのんびりしたものですが、マーティンビルボは事情がありそうですよね。aikoさんがおっしゃっているように若くして成長を放棄してしまった感じです。

そんな彼が心の中で求めていた冒険好きの血(=成長要求)に掻き立てられて危険な旅に身を投じ、成長していく…やっぱりこれってヒッチハイクガイドもSHERLOCKも一緒な気がどんどんしてきましたよ!

投稿: nya | 2013.01.20 22:27

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