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白山宣之遺作集「地上の記憶」感想

「白山宣之」の作品をはじめて読んだのはもう随分と前だ。東京三世社の「名探偵に名前はいらない」の中の一編。関川夏央先生の探偵小説を原作にした漫画アンソロジー。もう30年以上も前で、当時は大友克洋先生を筆頭としたニューウェーブと呼ばれる新興世代の漫画家たち(もちろんいまでは大御所だ)がどんどん頭角を現し始めた頃。もうなにしろ筆致が達者なのだ(達者すぎて模倣に見えることすらあった)。劇画タッチ、ニューウェーブ、ハードボイルド、戦前の冒険漫画風。どんな作風でも一貫してスタイリッシュ、そして素晴らしい余韻を残す作品ばかりだった。

しかし、達者故に非常に佳作。私も年を取りいつか漫画マニアのメインストリームから遠ざかり、彼の名を聞くこともなくなってしまった。

そんな折の訃報。そして彼の才を惜しんだ漫画界の重鎮の先生方がこの遺作集の出版に尽力された。

ここには時代を越えてなお失われることのない漫画の本質 - 娯楽がある。ただただ面白く愉快で心に沁みる。紙とインクの世界から香り立つ無限の空間と時間の広がりがある。なんという愉悦!

白山先生、楽しい物語をありがとうございました。私は漫画を好きで本当に良かったです。

「陽子の風景」「ちひろ」 - 映画的手法で語られる昭和の家族の風景。絵柄が(古いのに)古さを感じさせない(即ちノスタルジーを感じさせない)不思議。ただただ暖かくこころ満たされる
「Picnic」「大力伝」 - おべんともって関ヶ原を見物する農民、怪力女房が戦にあけくれる藩を支える - どちらもキュートな時代劇。絵柄は平田弘史先生風で豪快なのにどうしてこんなにかわいらしいんだろう!
「Tropico」 - 大好き!南洋冒険活劇!この無国籍風が大好きだった。

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