ロンドン五輪開会式感想
いやあロンドン五輪はじまったね!英国ファンとしては様々なメディアで英国がとりあげられるのがうれしい限り。ここ数年ご無沙汰になっちゃってたけど英国行きたくなっちゃったよ。マイレージがたまってるので時間さえとれればいけるんだけどねえ、まあそのうちに。
てなわけで開会式!漏れ聞こえてくるダニー・ボイル監督の演出プランがとても興味深く、楽しみにしていた。日本時間朝7/28(土)5時(現地時間7/27(金)21時)からの開会式をリアタイでみたよ。ツイッターからの抜粋。
・英国の偉大な作曲家エルガーのエニグマ演奏曲の「ニムロッド」。大好き!のだめと思ったことはひみつ。
・スタジアムの中央にはカントリーサイドが再現されている。丘陵、小川、水車、農家、リアルな牛や羊が放牧されている。農民たちはメイポールで遊んだり、ピクニックをしたり。のどかな農村風景 - 私も大好きな英国カントリーサイドをまず冒頭に持ってきてくれたのがうれしかった。前にも書いたがブリテン島は本来は森と荒地の島。美しいカントリーサイドは貴族によって作られた景観。いわばブリテン島は大部分が人工の島なのだ。英国おそるべし。
・セレモニーのタイトルは「Isle of Wonder(驚異の島)」。これはシェークスピアのテンペストの第3幕。島を支配する怪獣キャリバンの台詞から「Be not afeard; the isle is full of noises, Sounds and sweet airs, that give delight and hurt not.(こわがるこったねえ。この島はうるせえ音や音楽や歌声で満ちている。楽しいばかりで害はねえぜ)」
・オープニングビデオはテムズの源流からスタジアムまでを一挙にくだるスペクタクル。私の定宿。テムズのやや上流にあるマーロウのホテル「コンプリート・アングラー」も登場して大興奮!
・エルサレム(イングランド) - ロンドンデリー(アイルランド) - スコットランドの花(スコットランド) - ブレッドオブヘブン(ウェールズ) - そしてエルサレム 4つの国の歌のリレー。
・エルサレムは英国の夏の音楽祭プロムスのラストナイトで歌われるイングランド国民歌。歌詞は国民詩人ブレイクの「ミルトン」の序詞。この歌詞がセレモニーのモチーフになっている。1.Englands green and pleasant Land (イングランド - 緑の心地よい大地)2.dark Satanic Mills(闇の悪魔の工場) 3.my Chariot of fire(炎の戦車)
・サー・ケネス・ブラナーによるテンペスト。上記キャリバンの台詞朗読。「 ... and then, in dreaming, The clouds methought would open and show riches. Ready to drop upon me that, when I waked, I cried to dream again.
(夢の中では雲の切れ目から俺の上にいまにも落ちてきそうな宝物がのぞいてる。だから俺は起きたとしてもまたすぐに夢を見たくなるのさ)
・ブラナーはショーの始まりを宣言する。「さあ、夢の続きをはじめよう! 」
・ステージ上に大量に登場するのはいわゆる労働者たち。産業革命のはじまりだ!美しい緑の風景を壊し剥がし景観を工場へと一変させる。それを指揮するのはジェントリたちだ。ケネス・ブラナーは産業革命の立役者「サー・イザムバード・キングダム・ブルネル」に扮している。あまりメジャーな名前ではないので登場時にUSのツイッターでは「なぜブラナーがリンカーンに!」と話題になっていたそうだ。まあ服装似てるしな。
・イザムバード・キングダム・ブルネルは19世紀の技術者。テムズにトンネルを掘り、鉄道を敷き、巨大な蒸気船を作って大西洋に電信ケーブルを引いた。近代工業の祖ともいえる。
・スタジアムにそびえたつ巨大な煙突群。煤煙。煤で汚れた労働者たち。アフリカからの大量移民。女性参政権運動 - 世界に先立って近代化した英国にかかる負荷と歪み。英国賛歌に徹していないダニー・ボイルの視点が好きだ。このあたり演出もスチームパンクっぽくていい感じ!
・巨大な溶鉱炉が出現。鉄鋼労働者たちが額に汗して打つのは灼熱の鉄の輪。それが宙に浮いて五輪を形作る。暗い夜に火花を散らしながら浮かび上がる灼熱の五輪は哀しいまでに美しい。
・閑話休題。この産業革命のころの産業遺跡も大好きな英国の景観だ。巨大な鋳鉄の橋アイアンブリッジはすごいかっこいいよ!
・映像:バッキンガム宮にあらわれたのはダニエル・クレイブ扮するジェームズ・ボンド。足もとにまとわりつくコーギー(でぶでぶ)!のわんとモノホンの女王陛下を迎えに来たのだ。英国王室フランクすぎ!みんな大好き女王陛下のコーギーフィーチャーされすぎ!
・ふたりの乗ったヘリコはロンドンの町を行く。手を振る市民。国会議事堂前のチャーチル像まで手を振っちゃうよ!そしてスタジアムの上空に。ここからはリアル。会場上空からスカイダイブするボンド氏と女王様!会場大喝采。
・女王陛下とエジンバラ公フィリップ殿下御登壇。国旗掲揚、国歌斉唱
・チュープラーベルズとともにあらわれる大量の病院のベッド。子供たちと看護婦・医師。アナウンスでは英国のファンタジーといってたけどそれにかこつけたNHS(英国の国民保険サービス)のキャメロン政権によるコストカット批判をしてるとのことで、メディアでは左翼のプロパガンダだ!と結構な問題に。
・そんなプロパガンダをバックグラウンドにしつつもファンタジー大戦争は面白かった。空から大量のメリー・ポピンズ投下はすごかった。絵的にも美しいんだ。
・次のだしものはサイモン・ラトルとロンドンシンフォニーオーケストラ。炎のランナーのテーマを演奏。なぜかミスター・ビーンが!会場おおよろこび。ちょっとしたコントのあとにミスタービーンの回想映像。炎のランナーの有名なシーン。海辺をはしるメンバーになぜかビーン氏が!CGすげえ!遅れてるのでミニにのってずるしてる~。
・ミュージカル。英国の音楽史。これはついていけるぞー。セクピスはちょっと。大好きなデビッド・ボウイのスターマン。ボヘミアン・ラプソディでウェインズ・ワールドだすのってどうよ!
・この喧噪のミュージカルの中で進行するのはツイッターを使った恋物語。ARで画面にツイートが飛び交うのはとても変な感じ。
・そして最後のシーンでは、舞台中央にサー・ティム・バーナーズ=リーが登場!バーナーズ=リーは、ハイパーテキストを発展させ今日のwwwの基礎を作った人。世界最初のWebサーバは彼がNext Cube(ジョブズのね)上に構築したのだ。そのNext Cubeもステージに!今日このSNSによるコミュニケーションの礎となったのは英国人なのよというお国自慢だ!
・産業革命のイザムバード・キングダム・ブルネルとW3の始祖ティム・バーナーズ=リー。世界発展の礎となった、でも世界的には知名度がいまいちな二人をフィーチャーするのが素晴らしいね!
・テムズ上をボートに乗って聖火を運ぶベッカム。英国人本当にベッカム大好きだな!
・ここで選手入場。開会式が面白いのでこの瞬間まで入場のことすっかり忘れていた。選手ごめん!主役は選手だよねえ。ちょっと前のオリンピックでは選手はデジカメ&ビデオカムだったけど、いまは圧倒的にスマホ、特にiPhoneだにゃあ。どの国の選手も林檎マークのiPhoneもってるのは面白い。フラット化された世界?
・女王陛下による開会宣言。五輪旗を持つ人選がすごくポリティック。イスラエル指揮者ダニエル・バレンボイム(ユダヤ人としてはじめてエルサレムでワーグナー演奏)、 人権活動家サリー・ベッカー(オペレーションエンジェルのファウンダー)、市民活動家シャミ・チャクラバティ(左翼雑誌「リバティ」編集長)、リベリアの平和運動家レイマ・ボウィ(ノーベル平和賞受賞者)、エチオピアの国民的マラソン選手ハイレ・ゲブレセラシェ、ドーリーン・ローレンス(1993年白人の少年たちに息子を殺された母。容疑者の捜査は容易に進まなかったが、母の活動により事件から20年、2012年ようやく容疑者に有罪判決が下された。人種差別問題はいまだ英国社会に蔓延っている)、国連事務総長潘基文、自然保護活動家マリナ・シルバ(前ブラジル環境相)
・かつては世界の覇者であり、多くの国を植民地とし、産業革命の先陣を切った。それがゆえに多くの咎を負う。アラブの紛争、移民問題、人種差別階級差別、環境破壊 - 社会制度の崩壊と疲弊。こんにちの英国の姿は私たちの明日の姿だ。ジレンマを抱えてなお英国は進む。その先には -
・明日を担う若い選手たちに託された聖火。その火は各国を模した204の銅の花びらひとつひとつに灯され、それが集まって聖火台となる。闇夜に輝く灯。私たちは咎を抱えてなお平和という理想を掲げて進むのだ。
・大トリ。サー・ポール・マッカートニー登場。終わりだからかな「The End 」を歌う。
「And in the end, The love you take / Is equal to the love you make(そして最後には君がもらう愛は君が愛したのと同じだけになるよ)」。
・ファンとしてはアルバム「アビー・ロード」におさめられたこの一節を含む連作をやってほしかったな。美しく素敵なポールの作った詩とメロディ。
・「Golden slumbers fill your eyes/Smiles awake you when you rise/Sleep pretty darling do not cry/And I will sing a lullaby(黄金(きん)の眠りが君の瞳を満たす/目覚めれば君は微笑む/お休み愛しい人もう泣かないで/僕が子守唄を歌ってあげるよ)」「Boy, you're gonna carry that weight/Carry that weight a long time(坊やおまえはこの重荷をずっとずっと背負っていくんだ)」ってね。
・フィナーレは「ヘイ・ジュード」大合唱。最初機器トラブルがあって音楽がずれたけど、すかさず対処したサー・ポールはさすが。「ヘイ・ジュード」は大好きな曲だし盛り上がるけど開会式のフィナーレとしてはどうかしら。なにしろジョン・レノンとシンシア・パウエルが離婚してがっかりしているジョンの息子ジュリアンを励ますためにポールが作った歌(通説)だからにゃあ。「なあジュードがっかりするなよ。つらい現実だけど受け入れて自分の力で前にすすもうぜ」って感じの歌。意味がないわけでもないにゃ。うん、これでいいや。
てなわけで開会式。私にはとても面白かった。メディアでは偏向した内容だ!って叩かれてるみたいだけどね。だってえダニー・ボイルだよ?! 「トレインスポッティング」の監督にまかせるからにはそれくらいの覚悟しなくちゃって感じですな。DVDでないかなあ。でたら買うよ!
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コメント
開会式だけで満腹しました。高貴なボンドガールにマッカートニーの生歌!
最初はコーギーが2匹しか見えなかったので女王陛下のそっくりさんだと思ったのですが、ご本人だったのですね。とってもチャーミング!失礼ながら最高齢のボンドガールですね。
投稿: Kazz | 2012.07.30 12:46
Kazzさん、コメントありがとうございます!
開会式よかったですよね~。女王陛下のくだりは大笑い!すっげーフランクですよね英王室。最高齢のボンドガール!まさにまさに。
もちろんビートルズ大好きなので最後のポールは大満足でした。いつまでもお元気でジョンやジョージの分まで歌い続けてほしいと心から思いましたよ。
投稿: nya | 2012.08.01 08:51