「11ぴきのネコ」感想
井上ひさし作品にはじめて出会ったのは小学生の時だったな。デビュー作の「ブンとフン」(新潮文庫版)。ユーモア小説と思って読み始めたらかなりシビアな文明&人間風刺小説だったのでびっくりした記憶がある。その後五月雨式に小説を読み、芝居もいくつか観ているけど、まあいずれもシニカルで人間のずるさ哀しさ怖さ愛しさを描いている。
「11ぴきのネコ」もそうだ。原作は馬場のぼる先生のかわいい猫の絵本だけど、井上先生はそれをかわいらしい猫の皮をかぶったシビアな(蠅の王みたいな?)群衆劇にした。前向きで理想に満ちて仲間思いで勇猛果敢なにゃん太郎。彼がにゃん老人から聞き出した北の大きな湖に棲むというおおきな魚。それをつかまえればもう仲間が飢えることはない。彼のいざなう旅。都会の片隅でそれぞれの事情で野良ネコとなり腹を空かせた10ぴきのネコたちは、それぞれの思惑で彼にしたがっていく。
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一見明るく陰りのないかわいらしい(でもやってんのはアラフォーのおっさん小劇場俳優だけどね)猫の冒険劇の奥底に絶え間なく流れる不協和音はやがて戦慄のラストとなって観客に牙をむく。つけたしのように語られる後日談が彼らの真実だ。ラストのにゃん十一の歌「11匹のネコが旅にでた」がむなしく悲しく劇場にこだまする。それは私たち日本人が敗戦後歩んできた繁栄への軌跡への残滓なのか。その歩みの先にいまの私たちが知ってしまったひとつの回答―無残に壊れた原発の残像があるように感じた。
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