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あの日(再々掲)

あれから10年、ウサーマ・ビン・ラーディンが殺されても(それに何の意味があるのか)世界のステータスは依然、変わらない。くりかえし過去の9月11日のポストを再録。

平日の夜10時。 9月の4半期末を迎えたオフィスにはそれなりの人が残っていた。当時の私のカウンターパートはニューヨークの本社。時差は13時間。ニューヨークは朝の9時、まさにビジネスアワーが始まったばかりだった。

一通のメールを受けた。当時都内の出版社に勤務していた夫からだった。当時のログ。

From: XXX on 2001/09/11 22:12 Subject: テレビをつけろ
NYがたいへんな状況になっている。


意味不明 - 首を捻った私は、ボリュームを絞ってフロアのテレビをつけた。チャンネルをNHKにあわせた途端、飛び込んできた映像は、白煙をあげるWTC ... 「え? 事故?」 画面左よりやけにゆっくり近づく飛行機。ビルに吸い込まれる(セスナかと思ったくらいの非現実感)でてこない。「衝突?」ボリュームをあげる。

うろたえるニュースキャスターの声が響き、フロアにいる人々が三々五々集まってくる。「なに? 映画」

「ちがうちがう、これ中継だよ!ニューヨークのWTCに飛行機がつっこんだみたい..」「事故?」「でも2台つづけてつっこんだみたい。いまので2台目だって」「テロか?!」「と、とりあえず本社に電話してみるよ!」

フロアは蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。なにしろ本社はマンハッタン島にあるのだ。

本社に電話をする人。メッセンジャーでチャットをはじめる人。皆あらゆる手段で米国と連絡を試みる。

「ニューヨークは交通がマヒしているみたい。社員には自宅待機命令が出ているようだ」「マンハッタン島は立ち入り禁止だって」「なんか本社のまわりすごいほこりみたいなんだけど」

社員を通して海の向こうから情報が集まりはじめる。そのうちにテレビにもテロップがでた。「うそ..ペンタゴンにも飛行機突っ込んだみたい」「国会議事堂もだって?」「戦争だよ。これ!」もう、誰も仕事なんか手に付かない。時々海の向こうと電話しながらオフィスのテレビに見入る。

「ハイジャックされた旅客機が11機まだ飛んでるんだって..(後に誤報と判明」「それもどこかにつっこむの?」「原発があぶないよ」「いったい誰がこんなひどいことを?」「アラブじゃないかなあ」

WTCに空撮のカメラが近づく。「うわ..」 高層階の窓の外に夥しい人々がつかまり絶望的な助けを待っている。やがて耐え切れず落ちていく人々。なす術も無いのにただ時間は過ぎていく。次々と入ってくる絶望的な状況。あまりの痛ましさにテレビから人が離れていく。でも誰も消さない。オフィスで崩れていくWTCのサウス・タワーを見た事は忘れない。

結局、12時くらいまでオフィスにいた。帰りは夫と落ち合って彼の車で帰ってきた。「戦争ってこんな感じではじまるんだ..」 明日には世界を巻き込んだ核戦争がはじまってもおかしくない世界情勢なのに深夜の街はとても静かでなんだかおかしかった。

もちろん、米国のアクションは速やかで凄まじかった。しかしそれは思ったような世界を巻き込む戦争ではなく、プリミティブなアル・カイダへの報復だった - 命を落とした人は当時10000人ともいわれたけど、結局2800人に訂正された。それでも何千人もの人々が始業前、WTCで灼熱の炎に焼かれ、追われて亡くなったことは紛れもない事実だ。しかしその報復攻撃で巻き込まれた何千人ものアフガニスタンの市民がいたことも忘れてはいけない。報復は新たな報復を生み出すだけということは世界中の人々が感じたと思う。

そして世界はいまだ混沌の中だ。

追悼を、そして祈りを - 。

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