« つれづれ水無月:梅雨入りだよ! | トップページ | ソフトバンクのCMにシンガポールを懐かしむ »

3ヶ月目に思うこと(メモ)

今日は6月11日。東日本大震災からもう3ヶ月もたってしまったんだなあと思うとともに、まだ3ヶ月しかたっていないのかとも思う。被災された方々のご苦労はまだ続いているし、何よりも福島第一原発事故の状況は一進一退で光明すら見えていない。震災後の日本を強くリードすべき政府もあの体たらくで一向に腰が定まらず、一国民 - 有権者として被災地に、世界に、申し訳ない思いで一杯だ。

ところで私は震災後から、ずっと村上春樹先生の言葉が聞きたかった。震災直後、村上龍先生や坂本龍一先生など、世界に向けて意見を発信した著名人は多かったが、村上先生は一向に口を開くことはなかった。世界に対して多大な影響力のある先生のことだから慎重に発表時期を選んでいるのかなとも思った(もちろんその他の理由である可能性も高い)。でもそれはきっと「卵と壁」のように含蓄に富んだステートメントになるだろう、未だ暗闇の中にある震災後の私たちのこれからを照らす灯になればいいなと思っていた。

震災から3ヶ月たって発信されたそのステートメントは意外性に溢れていた。

村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上)

カタルーニャ国際賞スピーチの一報を聞いたとき、私はまず海外のニュースサイトを探した。当然そのスピーチは英語だと思ったからだ。そして動画のニュースを見てびっくりした。

村上春樹さん 原発政策を批判

日本語だった。日本語でしゃべる村上先生の映像を見たのはもう何十年ぶりだろう…先生シャイだからほとんどメディアへの顔出しはないのだ。スペインは英語圏ではないとはいえ、このような場でのスピーチは英語で行うのが普通であろう。それをあえて日本語で行ったということは、これは村上先生の受賞に対するサンクススピーチであると同時に、日本人に対するステートメントなのかとも思った。

日本人なら誰でも理解できるような、メタファーもない平易で誠実なスピーチの主旨は多くのメディアで報じられている様な原発政策への批判や政府・東電の断罪では無く、自己反省であった。

広島の原爆死没者慰霊碑に刻まれた「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」 - 核という圧倒的な力の前では人はすべて加害者であり被害者である - 核の力を引き出し、その行使を防げなかった我々全てが加害者であり、それを厳しく見つめなおさない限り、「過ちは繰り返され続ける」と訴えているのだ。

今回、福島で起こったことは私たちの過ちの結果だ。戦後、日本が瓦礫の中から復興し、経済大国になるためにとった政策が間違っていたと私は未だ思わない(戦前の日本の植民地政策が間違っていたと思わないように→正しかったと思っているわけではないよ)。ただただ政府の、東電のリスク管理の甘さを見過ごしてきた自身の迂闊さに臍をかむだけだ。

高度成長期を、バブルを、リーマンショック後の加速したGlobal化を経験し、世界の先端を走っていると思っていたら、私たちはふたたび、あの終戦時の瓦礫の街に引き戻されてしまった。国民のリテラシーは高く、勤勉で、進取の気概に富んでいる。しかし資源に乏しい極東の小国、日本が世界から搾取されず、パワーゲームに勝利し、繁栄を維持するために築き上げたロードマップからいつの間にか大切なものが抜け落ちていた、それは確かに結果論であろう。しかし、何か大きな力が働いて、走り続ける私たちの襟首をつかんで引き戻した - それはまぎれもない事実なのだ。

政府を、東電に腹をたて、断罪することは容易い。しかし「私たちは騙されていた、被害者なのだ」で終わってしまっては数多ある陰謀論と同じだ。その穴だらけの政策を、計画を許したのは他の誰でもない私たちだ。私たちが「強い日本」を甘受するために、リスク策定の甘さを"積極的"に許したのだ。忘れてはいけない。私たちは加害者だ。私は何よりも自分自身に猛烈に腹をたてている。

今後日本という国のBCP(Business Continuity Planning)を策定する際に、どのリスクを最重要視しなければいけないのか - この震災で明白になったと私は考えている。今後、日本およびその周辺地域の地殻変動は非常に活発化していくだろう。マグニチュード7以上クラスの地震が常に起こることを想定した国づくりを考えていかなければいけないのだ。今度こそ、過ちをくりかえさぬよう、核を使わないエネルギーの開発を、日本の中心命題に据えていかなくてはいけないと思う。

p.s.

日本のみならず海外で高く評価される村上春樹先生の作品。私は学生時代、「羊をめぐる冒険」を読んで大きな感銘を受け、ファンとなった。殺伐としたある種暴力的な世界観を持つ村上作品を私は愛しているが、その根底には日本人固有の「無常感」があり、時にその情緒が重ったるく感じられる時もある。ただ、きっとそれは狙ってのことなのだろう。作品はフィクション性が高いが、オウム事件の影響が色濃い「神の子供たちはみな踊る」「1Q84」もある。今回の大震災もいずれ作品に反映されるのだろうか。

【参考】エルサレム賞受賞スピーチ 日本語訳

|

« つれづれ水無月:梅雨入りだよ! | トップページ | ソフトバンクのCMにシンガポールを懐かしむ »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

nyaさま お久しぶりです。
のだめ以来のコメントですが、ずっとromしていました|∀;)

今回の村上春樹先生のスピーチ、私もずっと聞きたいと思っていました。
スピーチの中で印象に残ったのが、2度目の核という言葉・・・。
これまで当たり前のように原爆と原発を分けて考えていたことに改めて気付きました。
放射能の被害という点では、全く同じなのに。

実は明後日から入院・手術を控えているのですが(女の病気です)、
今回のスピーチはプリントアウトして持っていきます。
たまらず、コメントしてしまいました。
退院してから、ゆっくりまたお邪魔させてくださいね。

投稿: boo | 2011.06.12 02:12

booさん、コメントありがとうございます!

すべての日本人の心の中に「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」が刻まれているにもかかわらず、私たちは過ちを繰り返してしまった。このスピーチでその重い事実に気が付かされ、打ちのめされてしまいました。今度こそ、今度こそ、過ちを繰り返さないように邁進するしかありません。

そしてbooさんの一日も早いご快癒をお祈りしています。病院ではどうぞお気を安らかにお過ごしくださいね!

投稿: nya | 2011.06.12 09:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33364/51919026

この記事へのトラックバック一覧です: 3ヶ月目に思うこと(メモ):

« つれづれ水無月:梅雨入りだよ! | トップページ | ソフトバンクのCMにシンガポールを懐かしむ »