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「オトナアニメ」Vol6 グレンラガン特集を読む

連休2日目、amazonで注文したオトナアニメVol.6が届いたので読む。

例によって私の感想はネタバレには躊躇がありませんので、雑誌未読の方はご注意くださいませ~。 また私のグレンラガン特集に関する感想は劇団☆新感線の座付作家の中島かずきさんが脚本を書いたアニメという観点に基づいています。

なんか感想というより、考察(という名前の世迷言)になっちゃったのでスルー推奨。夫からは「『真ゲッター』と『トップ2』すら観ていないのに『グレンラガン』を語るなんて片腹痛いわ!」と言われていますよ。じゃあお前が語れや。

てなわけで、待望のかずきさんロングインタビューfor第3部&第4部版だ!

グレンラガンの17話から始まる第3部は、連続もののシビアな人間ドラマで「救国の英雄達のその後」を描いている。このパートの脚本はオールかずきさんで私は大ハマリだった。もちろんグレラガ全部大好きなんだけどね。特に第3部+ロシウ救済の23話まで、1部たりとも見逃すことのできない私にとっては大切なパートだ。

それは何故かっつーと、かずきさんの言葉を借りれば、第3部が「後手にしか回れないプロジェクトリーダー」の悲哀を描いているからかなあ。なにが悲惨だって「トラブル・プロジェクトの収拾にアサインされたプロジェクト・リーダー」の立場ほど悲惨なものはない。すでに破綻が見えているトラブル・プロジェクトの損害を最小限に留めて何とかソフトランディングさせるのがリーダーの役目。時には厳しく人を制し時には容赦なく切り捨てる。どうしたって損な役回りになってしまうのだ。

大グレン団の中で、唯一の知性派でグローバルな視点を持っていたロシウが、その慧眼ゆえに平時には無能な大グレン団を疎んじ、遂にシモンの死刑宣告に至る17~20話は、ロシウに感情移入しちゃって毎回胃が痛かったよ。どう考えてもロシウの視点は正しくて、その行動は間違ってないのに、立場的にどんどん悪役に追い込まれていく分の悪さ。ファンの声もロシウに対する非難が日に日に増していって、本当に自身がトラブル・プロジェクトのプロジェクト・リーダーになったかようなつらさだったよ。これって私自身がロートルな社会人で、プロジェクト・リーダーの経験者だからなのかなあ。

グレンラガンの物語を貫くひとつの骨子は、「この物語に悪役はいるけれど悪人はいない」ということだと思う。いや、悪役ということすらはばかられるくらい、ロージェノム、ロシウ、アンチスパイラルは皆、純粋に人類(宇宙)の安寧と存続を願っているのだ。物語的に彼らの間違いはただひとつ、「手段はそれしかないと思い込みそこで思考停止してしまった」ことにあるのだろうな。それに対する解答が「無限に上昇する螺旋の力がもたらすスパイラルネメシスを理性で制御する」というのがまだ腹に落ちていないんだけどねえ。

これはかずきさんインタビューではないんだけど、オトナアニメには、いま上映中のゲキ×シネ「朧の森に棲む鬼」の評もあって、そこですごく納得したのは、「アニキが死ななかった場合のケース」はオボロで既に解答が提示されていたんだなあということ。朧の森には登場するアニキはライ(市川染五郎)で弟分はキンタ(阿部サダヲ)。キンタが本当にかわいくってねえ。あれなら舞台でシモンきゅんができると思いました。サダヲ37歳ですが。

それはともかく、キンタは盲目的にライを慕い、アニキを護ろうと奮闘するけれど、ライは決してキンタを信用せず、それがゆえに壮絶なイキオイで天上まで駆け上がり、憤怒の中に滅びていく。ライはまるで26話の多元宇宙に登場した姑息で生き残りの術に長けている偽カミナだ。「シモンにナカミを与えられなかったカミナ」がどうなってしまうのか、それは機会があれば是非映画館やDVDでご覧ください。

ゲキXシネ「朧の森に棲む鬼」公式サイト

かずきさんのインタビューを読んでいると、かずきさんがどのように物語を作っていくかが良くわかって面白い。やっぱり演劇の国の人なので「決め台詞」をキーとして物語をすすめていくんですね。

・アンチスパイラルをどうやって倒せばいいか考えていたときに「天も次元も突破して」という台詞が思い浮かんで、全員合体してタイトルの「天元突破グレンラガン」になってアンスパさん倒す流れができた。

・シモンの成長は最終回で完成する。「穴を掘った人間は、後ろから来た人たちに道を空けなきゃいけない」「ドリルは同じところを回っているように見えても、一回転するとちょっとだけ前に進む」という2つのフレーズを考え付いたことで、シモンの成長物語も完結できるし、ドリルの物語に意味づけができると思えた。

かずきさんにとっての代表作はやっぱりいまだに「髑髏城の七人」なんだよなあ。これは1990年が初演の新感線の比較的初期の傑作だ。あの突っ込みどころが多くて、でも強烈に格好よくって魅力的な物語。でも、かずきさんはその後もたくさん名戯曲を書いていて、特に「グレンラガン」の根底には、「阿修羅城の瞳(シモンとニアの立ち居地と恋の顛末)」、「アテルイ」と「SHIROH」(主人公と対立する敵、それぞれに大義があり真の悪は無い)、「朧の森に棲む鬼(カミナとシモンの関係)」などの戯曲がある。

私はそれぞれに傑作だと思うのだけれど、かずきさんが「グレンラガン」を「髑髏城の七人」に並ぶ代表作と語るのは、それら全てをぶちこんで、いまのかずきさんの物語を「書ききった」感があったからなんだろうな。うん、カミナの名乗りも、シモンの成長も、ロシウの苦悩と救済も、ヨーコの生き様も、ニアの尊さも、私から観れば最初から最期まで一分の隙なくかずきさんの物語だった。

もちろんその物語に命を与えたのはGAINAXの卓越したアニメーションの制作力と、声優さん(+上川さんなるしさん)の演技力、岩崎さんのすばらしい音楽をはじめとした全スタッフの力だ。かずきさんはアニメーションの世界でも、力のあるスタッフに出逢えて本当によかったなあ。

その他のハッケンを羅列

1.今石監督の各話解説
・「ムガン」のデザインは、映画「トロン」から。レトロスペクティブ?
・20話の市民の混乱は「日本沈没」から
・物議もかもした4部の大グレン団のレトロスペクティブな衣装は錦織さん案だが、ヨーコの衣装をカゲキにしたのは今石監督
・シモンの☆サングラスは錦織さん案
・26話のアニキ復活は今石監督は反対していたが、かずきさんの脚本を見て納得した
・27話のエピローグは「ベルサイユのばら」のラストのようにしたかった
・今石監督とかずきさんは「グレンラガン」でロボットアニメでやりたいことを全てやりきった。続編はない(がーん)

2.柿原さん小西さん対談
・グレンラガンのアフレコは1年くらい前からはじめている。第一話は絵がついていた。アフレコの間隔が1ヶ月以上空くこともザラ。みんなよく役作りできるなあ。
・オーディションの小西さんのライバル声優さんたちはそうそうたるメンバーだった
・第8話以降の柿原さんは、芹沢鴨が死んだときの近藤勇といわれ、柿原さんが「え、僕は土方がいいなあ」と不満を漏らす。でも小西さんに「土方は檜山さんじゃん」といわれて納得。
・11話のシモンの復活口上は、演技として抑えることを要求された。ゆえに柿原さんにカタルシスはなかった。
・26話のアニキ復活「背ぇ抜かれちまったみたいだな」シーンで柿原さんはいつも泣く。小西さん自身はアニキの復活に疑問を持っていたが、あの台詞で納得した。

3.檜山さんインタビュー
・オーディションのシーンは、アディーネ姐さんに尻尾でビンタされているところ。ナイス!
・檜山さんの中ではヴィラルはもう少し見せ場があるキャラだと思っていたので、第1部&第2部で出るたびに負けるために「出落ちキャラかよ!」と思った。でもかえってそれで人気がでたのだ~。
・第3部のヴィラルがゲリラとして人間を護る立場になっていたことで、メンタル部分の成長をだすように演技した。
・名シーン「俺も甘い夢をみたものだ」は、自虐的になっても甘くなってもいけないため、物凄くさじ加減に気を使って演じた。あの一言がヴィラルそのものをあらわしていると感じている。

あの「俺も甘い夢をみたものだ」の台詞をヴィラルさんが言ったとき、グレンラガンの物語の中で語られなかった彼の7年間がばーっと背後に拡がった。人を討伐する側だった彼が、テッペリン攻略を経て野に下り、何かのきっかけで人の心に触れ、それに同調し、自分では決して持てない人間の生活に憧れ、遂にはゲリラとなって人間を護るにいたるまでの深い深い7年間だ。これは新感線の芝居の特徴だ。脚本と演出と役者さんの演技の効果で物語が一挙に広がって深みを持つ。グレンラガンでも芝居と同等の感動が得られたのがとても嬉しかった。なによりも檜山さんの力が大きかったと思う。

4.錦織さんミニインタビュー
・ロシウは最初に描いたキャラのラフ画に「宗教的な村に生まれた子供」とメモを入れたら、かずきさんがそれを拾ってストーリーを膨らませ、結果ロシウのキャラ付けが成功した
・登場人物の成長を描くのはすごくたいへんで、視聴者に違うキャラと思われたら負けだなと思ってつくった

5.吉成さんミニインタビュー
・....グレンラガンのデザインはキライなんだね
・ラゼンガンは最初グレンラガンのつもりでデザインした

6.かずきさんインタビュー
・2部までは「仁義なき戦い」シリーズ2作目の「広島死闘編」。3部は4作目「頂上作戦」。
・本当は監獄編を1クールくらいやりたかった。結果的に1話になったけど「おつとめご苦労さん」だけはやらなきゃいけないと思っていた。
・25話で、キタンを殺すにはどーすりゃいいのかと考えていたとき、「そうだ!ヨーコとキスさせりゃいーじゃん!」と思ったってかずきさんはひでー。キタンはもともとここまでひっぱるキャラじゃなかったけど、演じている谷原さんがとても良くて、結果キャラが膨らんで成長した。ゆえに最期にきちんと見せ場をつくろうと思った。
・上川さんはものすごいアニメヲタ(ゲームマニアということは、粟根さんのエッセイで知っていたが,.)。映画「ローレライ」のロケで海外にいったとき、樋口監督に延々「トップをねらえ」の素晴らしさについて語っていたというのをかずきさんが聞いてアンチスパイラルの声を上川さんにオファーしたらと推薦した。当初スタッフはまさか上川さんがうけてくれるとは思わなくって、あっさり引き受けたのでとてもびっくりしていた。
・26話の偽アニキをみて、上川さんは「さらば愛しきルパンよ」の偽ルパンだと見抜いた。
・最初に上川さんとかずきさんで話し合ったことは、「『さよなら銀河鉄道999』の江守徹を抜こうね!」だった。あんた達江守さんと「SHIROH」で共演してるじゃないですか!
・結果があの素晴らしい演技なのでスタッフ全員興奮した。いや本当にすごい名演技でした。「否否否~!」は歴史に残るよね。
・26話くらいから台本渡すと副監督の大塚さんの顔が渋くなる。「面白いけどこれどうやって絵にできるの?」って。かずきさんの「絵にもできない..」台本は健在だ。かずきさんが「だから、銀河をびゅっと投げれば~」と説明すると、もう顔に「ふざけんな」と描いてある。でも今石監督は「銀河と銀河のあいだを飛び移って、銀河の影にかくれて撃つ」みたいな絵コンテをちゃんと切った。多分銀河の扱い思いっきり間違えていると思うけどそこはイキオイで。
・最期のサブタイは、ガイナックスだったらSF作品にしなきゃと思ってつけたら、武田さんと赤井さんが「別に庵野さんはそうしてるけどキマリじゃないから」と言っていた。ただかずきさんは、グレンラガンのサブタイトルは毎回登場人物の台詞で、最終回はSF小説のタイトルでかつ作品のテーマとなるようにと考えてつけた。
・続編はないけど、ヴィラルがゲリラになるまでのスピンオフ作品とかは作れそう。是非~

7.今石さんミニインタビュー
・実現しなかったストーリーは監獄編の他に、シモンの地獄巡り(元ネタ中川英夫監督の怪作「地獄」はすごいよ!)とかシモンの筆おろしとか監督どれくらいシモン好きなんだ!
・グレンラガンにサングラスつけたりどんどん格好悪くしたのは監督
・主要キャラは錦織さん、アーテンボローなどの脇キャラは監督デザイン

8.福井裕佳里ちゃんインタビュー
・かずきさんからのアドバイスで、事前に台本など読まずに真っ白な状態で演技した
・メッセンジャー・ニアを演じたとき、ゆかりちゃんははしかにかかっていた(どんだけ若いんだ!)ため、スタジオ別録りとなった。みんなと一緒じゃないのは寂しかったけど結果的に黒ニア様の冷たい雰囲気がでて良かった。
・オーディションはニアとヨーコで受けた

しかしゆかりちゃんはかわいくってぽわわんとした雰囲気が本当にニアだねえ。まりなちゃんも可愛いし、二人して素でニアとヨーコのコスプレできるね!

蛇足1:オトナアニメのグレラガ特集はいつもアツイ。何と2008/1/10(くらい)に発売の次号でも、更に特集やるみたいですよ!でも特集のアツさと裏腹に毒舌対談「さらたね談」ではストンと落としているのがたまらなくデレツン。ああ、そうさ!何も新しいことはやっちゃあいねえよグレンラガンは!

蛇足2 : あ、そうそうもうひとつのかずきさんアニメの「大江戸ロケット」観たいよう。なんか舞台ではただの○リ○ル○ラ○だった赤井さんが、すげー格好いいキャラになってるって聞いたんですけど!それはまるで舞台を見た粟根ファンが「愛する粟根さんがこんな役なんて許せないわ!」って怒って、その行動に意味づけするために書いた二次創作みたいですよ....わー観たい~。(CSで放送される日を待っているのですが、めどがたたなければDVD買いますよ)


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コメント

初めて書き込みさせてもらいます。
最初で最後になるかもしれませんが、よろしくお付き合い下さい。
さて、グレンラガンの感想毎回楽しんで読ませて頂きました。
劇団新感線について何の予備知識もなかったので、毎回自分と違った視線で見られて新鮮でした。
さて、以前から不思議に思っていたのですが、ここまで新感線について語っているのに大江戸ロケットについて語っていないのは見られない環境だったんですね。
私は当初イマイチピンとこなくてスルーしてたんですが、偶々見た途中からハマって「最初からシッカリみときゃよかった」とハガミした作品なんですよ。
特に脇役たちの格好良さったらないですね。
特に終盤でその名バイブレイヤーたちがメインの話で…

以下ネタバレになるんですが…

(不味かったら以下読むの中断してください)


主役たちが「ここだけしか出番がない」とサメザメ泣くシーンが有りまして…

そこに突然乱入するグレンラガンのパロディ…

普段目立たない処か主要キャラは元より、モブキャラにまで「影が薄い」と無視されるあのヒトが…

まさかカミナと同じCVだったとは、全くきづかなんだ。
いや、笑ろた笑ろた。
それではまた。

投稿: HAL93 | 2007.10.08 05:05

HAL93さん、はじめまして!

こんな拙い感想を読んでいただいてほんとうにありがとうございます。そーなんです。「大江戸ロケット」は観たかったのですが、視聴地域ではなく、残念に思っております。せめてTVKでやってほしかった!

さて大江戸ロケットの脇キャラはほぼ舞台と同じです。つまり新感線の劇団員たちで、みんなキャラが立っている。小西さんが声をあてている源蔵さんの中の人も、舞台ではおよそどの演目でも「影が薄い」ことをネタにされているのでした。

ああ、観たかったなあやっぱり、あと戯作者中之島かずきちさんもね!いずれなんとか手に入れて感想文を書きますので、またいらしてくださいね!

投稿: nya | 2007.10.08 08:54

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受信: 2007.10.24 21:03

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