もやしもん大人買い
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大学では微生物学を専攻していた。卒研はある嫌気性細菌についてだったな。もう20年も前なので詳細は記憶の彼方だが。これでも昔は生物に対して志を持っていたのだよ。私が高校生の頃、遺伝子工学が一般に知られるようになり、科学少女(笑)だったnyaは別冊サイエンスの遺伝子工学特集なんて読みながらいつかこんな研究をと胸ふくらませていたのだ。当時の遺伝子工学のメッカは大阪大学の理工学部。一応都内の進学校に通っていたため、別に阪大を志してもおかしかない環境だったのだが、いかんせん私は生物のみが得意で物理化学のまったくだめなエセ理系。阪大なんて夢のまた夢 - しかし、まあなんとかもぐりこんだ某大学でもそれなりの研究はできて楽しかった。大学4年は細菌にまみれてすごしたよん。以下チラ裏なんでスルーして。
オートクレーブで滅菌したシャーレや試験管に寒天培地を張って、クリーンベンチでエーゼ(白金耳)による試料塗布。インキュベータで培養。お目当てっぽいコロニーができたらさらにそれを分離培養...それを繰り返し最終的には同定するのが細菌同定の手順。 当時からソコツモノの私はコンタミ(せっかく分離同定した細菌培地に他の菌が混入してえらいことに..)なんて日常茶飯事。熱いエーゼ(使用時にアルコールランブで赤くなるまで炙って殺菌する)で自分の手を焼いたり、ピペットで吸い上げた薬品を飲んじゃって大騒ぎしたり、1個5000円もする三角フラスコを週いちペースで割ったりとまあその手の逸話にはことかかなかった。だから後に漫画「動物のお医者さん」でまんまそんなエピソードが語られているのをみて胸をなでおろした..わたしだけじゃなかったんだあ ってね... いや本当にすみませんでした指導のN教授。
チラ裏終わり。すんません思い出に浸ってしまいました。
で、たぶんわたしと同じような大学生活も少しは送られたのでしょうか... 私の行きたかった阪大学理工学部醸造工学科出身の粟根さんは。せっかく微生物を志す学生憧れの大学の花形学部在籍の超エリート学生だったのになまじ演劇の才能があったばかりにドロップアウトするなんてなんともはやもったいない....微生物畑出身粟根ファンとしては少々フクザツな心境なのだ..いやいやここはやはり演劇の神様に素直に感謝ですね。
で、そんな微生物畑出身の粟根さんご推薦の漫画「もやしもん」。私も「もやしもん」の評判は知っていたが、菌が見えるという荒唐無稽な設定と、絵柄(石川先生のファンの方々すみません)に抵抗があって今まで購入を見送っていたのだ。しかし月とスッポン程の違いはあれど微生物に関して同じようなバックグラウンドを持つ粟根さんの推薦なんだからマジ面白いんだろうと思って買って読んでみたら...ほんとうに面白かったよっ!思ってたのとはちょっと違ったけどね。テーマは生活に役立つ微生物学「醸造」だ!
世界は細菌に満ち満ちている - なんてナウシカの世界みたいだけどまさにそれ。草木の生えぬ高山から火山の灼熱の溶岩の中、海底の熱水鉱床までありとあらゆる場所に偏在する細菌。もちろん私たちの体も例外では無い。細菌と穏やかに共存できれば健康に日々を送れるし、ホメオスタシスが崩れれば深刻な内臓疾患や皮膚病に陥るのだ。細菌を有効に活用する試みは有史以前から成されてきた。世界のあらゆる民族が細菌を利用して食物を保存したり、栄養価を高めたり、よく効く薬品やうまい酒や調味料をつくってきた。それが醸造だ。
てなわけで『もやしもん』の主人公沢木直保君は、種麹屋の跡取り息子で農大の新入生。入学後さっそく訪ねたのは祖父の知人の年齢不詳性格不詳の樹教授。実は沢木君には秘密があった。彼には菌が見えるのだ!しかもとってもラブリーな姿で。その能力に大いに懐疑的な院生長谷川嬢(ボディコン)のイヂワルな審査も見事クリア。個性豊かな同級生や先輩たちと順風満帆(!?)な農大醸造ライフを送り始める。
この作品にはさまざまな発酵食品が登場する。キビヤック・ホンオフェ・ラクレット・シュールストレミングにサルディーニャチーズ、これらの特徴を一言でいえたらあなたも明日から醸造博士(かな?)。もちろんお酒も日本酒・ワイン・ビールに泡盛とりどりだ。「かもすぞー」(「かもしてころすぞー」はキケンなO-157君とかボツリヌス君)が合言葉の愛らしい菌たちと沢木君と仲間たちの愉快なエピソードを楽しんでいくうちに生活に不可欠な菌の知識が自然に身についちゃう現代の学習漫画。それが「もやしもん」なのだ!
.... で、樹教授の出自とその思惑は?長谷川嬢の良家の子女設定は物語の本筋に関わるのか、そして1巻で消えちゃった蛍くんと金城嬢の他人の空似の設定はなんのため?....ってまだ風呂敷広げてる最中なのかなあ、前ふりが長いよっ! ...けどまあいいや楽しいから。私は美里・川浜先輩コンビが好きだなあ。不気味に見えて実はとってもいい人たちなのでありました。
ま、結論としては人はどんなに菌にまみれようともそうそう病気にはならん、なるときは思いっきりなっちゃうけどそれは運...なのであんまり気にすんなということですね。カバー裏にもご注目。楽しいよ!
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