**2010/9/21追記 : ご依頼いただきNyaのホローマンの訳文を、アニメ「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD 」の最終回に提供いたしました。もちろん「かくて世の終わり来たりぬ」の一文は、このエントリーに記載の通り、井上勇先生の訳であることも改めてお断りしております。
このエントリーを読まれた方に。もし機会がありましたら、古典SFの名作「渚にて」をお読みください。偶然の出会いがあなたを馥郁たる空想の世界へいざなうよう願ってやみません。私が40年前に出会ったように。
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静かな雨の休日 大好きなネビルシュートの終末SF「渚にて(On the Beach)」を読んでる。1957年初出だからもう半世紀前の作。米ソ冷戦時代、核の影が色濃く世界を漂わせていた頃に世に出された傑作。息詰まる政治の駆け引きも激しい戦闘もドラマチックなラブシーンもない。そこは核戦争後の世界。戦争初期に使用された核爆弾によりすでに北半球は死滅。わずかに残された豪州の人々の前に迫る放射能。人々は形なく忍び寄る放射能の影におびえつつ淡々と日常を送る。取り残された人々が崇高に静謐に滅びを受け入れていく姿は美しくただ哀しい。
下記は冒頭を飾る英国詩人エリオットの詩篇「ホローマン(空ろな男)」からの抜粋。「Not with a bang but a whimper.」のくだりを「地軸くずれるとどろきもなく ただひそやかに」と訳した井上勇先生はすごいなあと思う。エリオットが第一次世界大戦の戦渦を憂いて作った詩篇を一気にグローバルな視点に引き上げて本質は失っていない。これぞセンスオブワンダー。
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この終末の集いの場所に
我ら交わす言葉もなく潮満ちる渚に集う
かくて世の終わり来たりぬ - 銃声ではなくすすり泣きのうちに(アホ訳はnya)
In this last of meeting places
we grope together
And avoid speech
Gathered on this beach of the tumid river...
:
This is the way the world ends
This is the way the world ends
This is the way the world ends
Not with a bang but a whimper.
("The Hollow Men(1925) T.S.Eliot" より抜粋)
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