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2006.05.20

「メタル・マクベス」感想

おやおやまあまあ、新感線お初のシェイクスピアは吃驚するくらいクドカンですよ奥さん。いや困ったな私は以前書いたようにクドカンの芝居脚本苦手なんだよね。でも不思議。メタル・マクベスはそりゃあもうどうしようってくらいに面白いんですわ。4時間なんてあっという間ですよ。シェイクスピアのマスターピースとぬるいクドカンギャグといつもの活劇新感線と全方位からの客演さん。噛み合っていないのにその不協和音が心地よいのは何故かしら。これからのリピートはこの謎を解くために費やそう -

あ、詳しい感想の前に心の叫び。美しく冷静なフェルナンデス国パール王が私の横を駆け抜けていかれました~。らぶ~(馬鹿)

例によってこの項ネタバレには躊躇がありませんので、これからメタマク観劇予定の方はご注意くださいませ~。

注:下記感想は5月20日、28日両日の感想をあわせたものになっております。

メタマク感想一覧 : 5/20(土)5/28(日)6/10(土)6/17(土)→東京楽!7/4(日)→大楽!

ある夫婦の話をしよう。気弱な夫に勝気な妻というごくありふれた組み合わせ。心優しくやや深慮には欠けるが有能な夫。有能が故に周囲の声にまどわされうっかり野望を持ってしまう。夫を盲愛する妻はその望みを叶えようと策略を巡らし、権力の階段を登らせる - あれ?こんなお話は最近観たぞ、大河ドラマの「功名が辻」(SHIROHの上川さんが主演だね)。でもさあ有能だが単純な夫を盛り立てる賢しい妻の成功物語なんてヘボンなお話だよ(大河に他意はありません~)、失敗するから面白いんだよねーシェイクスピアさん。まあ件の夫妻にとって不幸だったのは、この二人王様と王妃様なんていってるけど実は気弱な小市民。平凡な人間が過ぎた野望を抱けばその身を滅ぼすから注意しようね~という教訓話。

あ、だから背景が朽ちかけた六本木ヒルズなのね。タイムリーだけどあざとい~。

上にも書いたけど、シェイクスピアのマスターピースをクドカンといのうえさんがよってたかって世紀末マクベス伝説みたいなメタル芝居にしちゃったの。いろんな要素の相乗効果で物凄いパラダイムシフトがおこるんじゃないかと期待したけど残念ながらそれは無かった。

思えばここ数年の新感線は「モノホンの歌舞伎役者主演で新橋演舞場に!」「はじめて帝劇で国産ミュージカルを!」「はじめて原作付のいのうえ歌舞伎でストレートプレイを!」などなどはじめて尽くしで進取の気概に富んだお芝居をぶつけてきてた。それをいっちゃあメタマクだっけ「はじめてクドカンでシェイクスピアで!」なんだけど、いのうえさんがずっとやりたかった「メタル芝居」がやっと上演できてよかったね~というお目出た気分にすべてが呑み込まれていたって感じ。後半の重厚な悲劇さえもね。

きっとこのお芝居作り手がすごい楽しかったと思うのだ。作る喜びに溢れてるお芝居。観客にもそのわくわく感が伝わってきてみてて多少の不協和音すら心地よい。良かったね~ラストは悲劇だけど大団円!カーテンコールもみんなゴキゲンではっぴー!

でも芝居を観終わってしばらくして「これで良かったのかな?」って思ったんだ。シェイクスピアのマクベスは悲劇のマスターピースだけに無駄がない。それが故物語の骨子をいじらずに、ヘビメタバンドの栄枯盛衰物語を絡める事で独自性を出したクドカンの狙いはとてもいい。でも「ひょっとして手抜き?」と思ったことも事実。時間がなかったのか興味がなかったのか歯がたたなかったのかわからないけどさ。たぶんそれぞれちょっとづつ。

も少しマクベスそのものをいじってもよかったんじゃないかなあクドカンなんだからさ。だってバカップルのランディ(マクベス)夫妻、すっげーかわいいじゃん。後半、己に罪に苛まれて悄然とした夫人が、ランディに向かって「ごめんねー、あたしのせいだねー」って謝るシーンはすっげー胸つまるじゃん。ランディにもらったキャラメルを「おーいしー」って食べる狂った夫人、それを優しく見守るランディはすっげー切ないじゃん。

こんな生き生きした描写がある一方で、ほぼ素のままのシェイクスピアの世界もあるもんだからどうもちぐはぐ感がぬぐえない。また内野さん松さんが芸達者で両方ともうまく演じてるから余計にそう感じちゃうのだ。これならいっそオリジナル部分は役名以外一切いじらずにストレートプレイで見せてそこにメタルバンドの世界がどんどん侵食していったほうが良かったんじゃないかとも思ったけどそれじゃ4時間で終わらないだろうからねえ。

クドカン風に掘り下げたマクベス夫妻をもっと見たかったな。夫は「松さんはマクベス夫人の業をだすにはまだまだ若いな」っていってたけど、私はキュートであったかくて浅はかなクドカンワールドの女の子であるところのマクベス夫人はありだと思った。それで相方が男気あふれて不器用でちょっと間抜けないのうえワールドの男の子であるところのマクベスだったら最高だ。結局シェイクスピア版だって浅はか故に滅びていく小者夫妻の話なんだしさ、それを思いっきりキュートに書いたって問題ないし、クドカンといのうえさんならそれできた筈じゃん。見てみたかったなあ。

とはいえ、脳内にインストールされた音楽に操られ交錯する過去と未来って魅力的なガジェットだし、芸達者な内野さんが過不足なく演じるマクベス=ランディの混乱は真に迫っていてよかったよ。惜しむらくは、パンクォーやマクダフ、ナンプラー(って誰よ!)あたりの友情芝居があまりなかったので、ラストそれぞれへの執着がウスク感じられたってことだな。ローズはどうも役に深みがなくってさ。松さんのせいじゃないよ。

てなわけで、コラボとしてはどうかな、だったけど面白かったよ。何しろいのうえさんが愛したメタルの世界を思いいれたっぷりにデコレートして(PV大好き~)お皿に乗せてはいどうぞって世界だからね、拒否できるはずもない。コミック・バンド「メタル・マクベス」は大好きだよ!

でもさいつか、またいつかクドカンといのうえさんがもっと大人になったときに「一歩引いた」状態でこのお芝居に(別の形でもいいけどさ)挑戦して欲しい。ブレイクし切れなかったメタルマクベスは若さ(=思い入れ)ゆえと思いたい。シェイクスピアを振りちぎっちゃう様なすんげー世界を見せてくれるときっときっと信じているよ。

(2006/06/04追記)

キャラ寸評(敬称略) :

客演組
内野聖陽(ランダムスター/マクベス内野) : じゅんさんから結婚お祝いのディープチッスが(拍手がおこっておりました)。おめでと~。それはともかくなんて華がある役者さんなんでしょう。オーラ出てたっす。「ベガーズ・オペラ」のマクヒース役のときも思ったのだけど、調子こいているときのきらきら感としょぼくれたときの沈没感をだすのがとてもうまいなあ。
松たか子(ランダムスター夫人/ローズ/林さん):主役に生まれついた人っているんですよね。クドカンの姑息で下品なギャグを演じていてさえも上品で豪奢ってすごいなあ。初登場シーンは大笑い。ばかっぷるマクベス夫人かわいい~。ローズの造型はありきたりだけど松さんが演じると光って見える。お歌も最高。尊敬です。
森山未來(レスポールジュニア/元きよし):惚れた!かっこいい。まだ21歳なのに歌もダンスも演技も最高にうまい!これからが楽しみだ~。なんでその年でこぶしのきいた演歌歌えるのよ!あのPVは何故DVDにはいっていないのだ...。
北村有起哉(グレコ/マクダフ北村):惚れた!(こればっかり)。すげー手足長くてスタイル良くて目立つ目立つ。グレコはあんまり遊びのないキャラ(=新感線っぽくない)だからかえって難しかったろうに難なく演じてました。マクダフってワンシーンだけの登場なのに印象深い。もっと観たかった。
上條恒彦(レスポール王/元社長) : 貫禄~。上條さんの歌のシーンは劇場が別空間になってました。すっげー声力のある人。カレー風呂のシーンは気持ちよさそうでした。そう楽しそうに演じてたのが良かったな(にこにこ)
皆川猿時(門番) : だからさ~。パンフの中でも扱いがヒラの劇団員と同じってどういうことよ港カヲルちゃん!門番のシーンってこのお芝居の要だと思う。そこに大人計画テイストを持ってきたクドカンって策士だよね。あ、でもまあ皆川さんはいつもの皆川さんですから。
冠徹弥(冠くん) : 昨年のマクベスライブで初お目見えの冠さんはシャウト担当。えっと本業はメタルの歌手なんですよね?演技うまいっすよ普通に。

劇団員:
橋本じゅん(エクスプローラー/バンクォー橋本):何もいいません~。じゅんさんはいつものじゅんさんです~。エクスプローラーの実直だけど野望もある役どころをうまく演じてました。歌うまくなったね!
高田聖子(グレコ夫人/シマコ):聖子姐さん、着物姿もグレコ夫人のメタル衣装もステキ!もっとみたかったよ~。
粟根まこと(パール王/ナンプラー):どうしましょう、わたしナンプラー君の「う~ちゃんう~ちゃん」の声が頭から離れません!パール王はもうなんだかきらきらでさらさらですけすけ(いやん)で素敵すぎて目がつぶれそうです!次回からはオペラグラスを持参することを心から誓います(ダメ粟根ファン)。
河野まさと(マーシャル):サンボちゃんがじゅんさんの子供って!森山君とそんな年違わなくみえちゃうのはカナコさん同様化け物っぽいよね。SHIROHからこっちヒーローっぽい役どころで腹黒サンボちゃんに逢えないのがちょっと寂しい。
右近健一(林さん):わーはは、そういえばヒロインとチェンジ!って七ぼう星でもやってたよね右近さん。歌良し声良し物語の要だしでよし子姐さんカナコさん含めて劇団ファンとしては大満足です。
村木よし子(森さん):よし子姐さんの宝島少女姿が拝めるなんて!すっげー。
山本カナコ(柳さん):で、よし子姐さんはちょっとつらいけど(御免)カナコさんは本当に若く見える化け物です。右近さんのメインボーカルによし子カナコさんのサブボーカルが重なる新感線スタイルで物語をドライブしていたのはとても良いと思ったよ。

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コメント

nyaさん、ついに行かれましたね~
パール王の長い黒髪、大層美しゅうございましたでしょ?
おいら、また明日(アレ?今日だ)行って来ます♪

続き、お待ちしていますね(*^^)

投稿: くまのすけ | 2006.05.21 01:41

2度目にゆかれるときには、ぜひ

「ずるむけー」と叫んでくださいね!

投稿: やすべろ | 2006.05.21 03:41

わあい、くまのすけさん、コメントありがとうございます~。

ついに行きましたよ!そしてぶっち面白かったですよ。パール王美しかったです。そして森山君と北村さんにらぶですよ!

感想はなんかいろいろ思うところあるんでぢたぢた書いていくと思います。くまのすけさんは今日が二回目なのですね!いいなあ~。くまのすけさんの感想続きも楽しみに待ってます~。

投稿: nya | 2006.05.21 11:22

やすべろさん、コメントありがとうございます!

合言葉はずるむけ!(このあたりのセンスはクドカン)。やすべろさんの感想も聞かせてくださいよ~。

投稿: nya | 2006.05.21 11:23

TB、ありがとうございました♪
クドカンの笑いのセンスはおいらの肌にはぴったり(笑)
時代的なものもドンピシャなんで、初見の友人(ちょいと年下)を尻目に肩振るわせ笑ったものでした。
ところで、ずるむけJr.の“海のトリトン”風ヅラって、あれは絶対未來くんは知らないですよね~?
…勿論(?)おいらはリアルタイムで知っていますが(T_T)

投稿: くまのすけ | 2006.06.05 22:15

くまのすけさん、こちらこそコメントとTBありがとうございます!

クドカンのぬるい笑いセンスは私も好きですよー。そして世代ギャグもばっちり。いのうえさんと同世代の私にとってはかなり下の世代のはずなんですけど~。

森山君は1980年代生まれ(すげー)っすからね、そりゃあもちろん知らないでしょう。私は手塚先生の新聞連載を読んでいたクチですが(化石)

投稿: nya | 2006.06.06 06:41

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