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あるサイトについて

今回の記事は、ごくごく狭い趣味の世界のことであり多分に私的でセンチメンタルなタワゴトなので、華麗にスルーしていただけるとありがたいです。

「ネッ広」とは、かの士郎正宗先生の名作「攻殻機動隊」(ただし一巻のみ)のエピソード「人形使い」のラストで主人公草薙素子少佐が呟いた「ネットは広大だわ」の台詞に由来する。世の中には様々な趣味趣向の方々がいて、時にはおおっぴらに時にはひっそりとインターネット上で情報発信をしている。まさかと思うような趣味の人が意外に偏在していてびっくり...そんなときに呟く言葉が「ネッ広」なのだ。

さて、BL(ボーイズラブ)とは、男性同士の恋愛を描いたオリジナル・ストーリーだ。一口にBLと言っても様々な分派が存在する。一般的には美丈夫な男性と女性と見まごうばかりの美しい青年のカップリングでの恋愛という、いわゆる24年組あたりの少女漫画から連綿と受け継がれてきた伝統的な物語を指すが、近年はその枠に収まらないバリエーションが増えてきた。草臥れてお腹の出た中年サラリーマン・ガテン系の筋骨隆々のオヤジ・普通のお兄さんといった、どちらかといえばリアルゲイ的なカップリングの恋愛を好む腐女子が結構いることが判明し、それに見合ったマスマーケット向けの作品も増加している。

そんな一昔前ではありえなかったカップリングの作品が受け入れられているのも、インターネット上でBL作品を発表しているサイトが増えていることと無縁ではないだろう。ショタから老人まで、ヲタク男子同様に腐女子のストライクゾーンは多種多様だ。まさに「ネッ広」。勿論サイトで発表される作品は玉石混合。素人の書き殴りに近いものから、プロ級のものまで多彩なサイトがゴマンと存在している。日々新しいサイトが生まれ、消えていく - それがオリジナルBLサイトの世界だ。

私も数年前に、この世界に読者として分け入った。いわゆる大手と呼ばれるセミプロ級のサイトで出会う宝石のような名作に感激し、BL専用の検索エンジンでみつけた様々なお気に入りサイトをブックマークに登録して日参する、それはいまも続いている。

新しいサイトに出会い、そこの作品傾向がストライクゾーンだった場合には至福の時間が訪れる。特に完結済みのお話がいくつもあるサイトなんて最高だ。そんな長編に出会って何度徹夜したことか。作品の感想をメールや拍手で送ることも最近は面倒がらずにやるようになった。何しろ、この宝石のような数々の作品を生み出してくれている管理人(=アマチュアBL作家)さん方は、純粋にボランティアで行っているのだ。日ごろは学生や社会人、主婦としての生活を送り、時には睡眠時間を削ってまでその溢れる才能の一端をインターネットで開陳してくれている - 読者にとってこれ以上の僥倖があるだろうか。そんな感謝の心をファンレターという形で送っているのだ。

先日も素晴らしいBL小説を掲載しているサイトにであった。管理人はまだ20代の学生さんだ。創作活動を開始されたばかりのようで、怒涛のように日々新しい作品を生み出している。小説としては若書きゆえか少々拙いところがある。またシチュエーションは時に露悪的 - いわゆる癖のある話が多いのだが、スジがいい。マイノリティとして生きることの悩みや周囲との軋轢をきちんと押さえ、ジェンダーを超えた家族像を温かな視点で描いている。なによりも登場人物が生きている。メインだけではなく脇の老若男女の造型がその行間から生き生きと立ち上ってくる。若書きの欠点を補って余りある才能の煌きに圧倒された。

この人は本物だ。驚喜して拍手やファンレターを送った。作品はやんちゃなお兄さんを主人公にしたものが多く、従って地の文や台詞も少々乱暴だったりするのだが、いただいたお返事は丁寧で礼儀正しくそれにも感心した。良いサイトに出会えて良かった。やがては創作ペースも落ちついていくだろうが、末永く書き続けて欲しい。きっと社会経験を積むにつれさらに素晴らしい作品を生み出せるだろう。こちらも末永く応援していこうと思った。

一般にBLサイトは、作品の他に日記やBBSを併設しているところが多い。そのサイトも日記があり、BBSこそ無かったが、拍手とメールフォームで読者との交流を図っていた。管理人さんは律儀な人で、拍手コメントやメルフォにひとつひとつ日記で返事を返していた。当初は好意的なものがほとんどだったが、ある時期からあまり好意的ではない拍手やメルフォが増えてきたようだ。サイトの作風には癖があり、BLの枠にとどまらないものも多いため、おそらく嫌悪感を抱く読者もいるだろうということは容易に想像がついた。こんなアンチはどのサイトにもいる。

自分の好きな傾向ではないサイトに出会ったら黙って立ち去ればよいものを、何が楽しくてアンチコメントを送るのか私には理解できない。そもそも匿名で罵倒に近いようなコメントを送るのは卑怯な行動だし、愉快犯のようなものだから、無視するのが一番の対策だ。しかし当該サイトの管理人さんは若さゆえかアンチコメントにもいちいち返事を返しており、どうもうまく立ち回れていないようだった。私はメルフォで、相手にしないほうが良い旨のアドバイスを送った。同様な意見は多かったのだろう。しばらくしてアンチコメントは掲載されないようになった。

ところで「ネッ広」の雄はなんといっても巨大匿名掲示板「2ちゃ○ねる」だろう。ネットの闇のように言われることも多いが、なに大半は細かくカテゴライズされた趣味の掲示板(板)で、同好の士が和やかに交流しているだけだ。しかし匿名の気楽さ故か、ウォッチと称して誰かの悪口や無責任な噂話で盛り上がるような下衆な面もあることは否めない事実だ。BLサイトの管理人の挙動をウォッチしている場所もある。人気のあるサイトが俎上に載せられ易く、いわゆる大手サイトはおおむね洗礼を受けているのではないか。

噂話をすることの善悪を問うつもりはさらさらないが、無責任な噂話は時にひどい中傷となる。厄介なことにこの世には非常にお節介な人がいて、管理人に「あなたのサイトが噂になっていますよ」と伝えてしまう場合が大半だ。自分が匿名掲示板でウォッチの対象になっていることを知った際の対応は管理人さんによって別れる。おおむねはスルー。賢い方法だ。しかし時には自サイトで反論をする豪気な管理人さんもいる。これはあまり賢い方法とは言えない。ウォッチャー達は反応を受けて更にフレーミングする。噂は悪質な中傷となり、やがてはサイトへの直接的な攻撃となってしまう場合が多いからだ。ひどい中傷を受けてサイトをクローズしてしまう管理人さんもいる。良い作品を書いているサイトがこんな理由で閉鎖されるのはなんとも忸怩たるものがあるが、ウォッチャーに反省は無く、さらに次のエモノを探して虎視耽々とネットを徘徊しているのだ。不毛な話だ。

そんな噂話の板に、当該サイトが登場したのは最近のことだ。たしかに管理人さんの日記にはやんちゃ自慢をするような言動もあったし、当初はサイト運営に不慣れなための不手際が見受けられたのは事実だ。そんな点が噂板で指摘され、やがて根も葉もない中傷に変わった。学生という経歴は詐称だ、人気サイトを装いたくてカウンターを操作している、日記で多くの拍手やメルフォに返答しているが、そんなに人気があるはずはない、きっと自演しているのだろう(ここで私の名前までが晒され自演扱いされてしまい、へんな2チャンデビューとなってしまった)と言いたい放題。暇なウォッチャーはそのサイトに貼りつき、管理人さんの言動を逐一報告し、勘ぐったり悪口を言ったりと無法状態となった。

この一方的な攻撃に管理人さんはとうとう堪忍袋の尾が切れて、あろうことかその板に直接反論を書き込むという一番やってはいけないことをしてしまった。 - あとは押して知るべし、際限ないフレーミングだ。

いまは騒動はやや落ち着き、当該サイトも平穏な状態を保っているが、おそらく拍手やメルフォでのアンチコメントは続いていることだろう。噂話は相変わらずだが、反応しなくなった管理人さんの自制心には頭が下がる。若いのに本当に立派だ。この宝物のような才能を持った管理人さんがこんなことに煩わされず平穏な日々を送り、良い作品を書き続けていって欲しいと今は祈るばかりだ。

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コメント

うんうん! そうなんですよ~
私の友達も、ネットで漫画(アニパロ)を発表してたんですが、誹謗中傷、作品の無断転用(パロだから大きな声で文句も言えない)などなどで、すっかりネット落ちしていたんです。(最近、やっと復活)
その友達も、応援してくれる人の拍手やファンレターが心の支えになったとは言ってましたが、100万人の応援があっても、1人の心無い一言で筆を折っちゃうような人もいるんですよね。
何とかなりませんかね~ほんとに。

投稿: 俊子 | 2006.04.22 13:39

俊子くん、コメントありがとう!

>1人の心無い一言で筆を折っちゃう
そうなんだよねえ。私の好きなジャンルもそうやって多くのサイトが閉鎖に追い込まれてるのだ。
なにが楽しくてそんなことをしているのか本当にわからないよ...。

投稿: nya | 2006.04.22 22:00

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