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「12人の優しい日本人」感想

よくできた脚本と達者な役者達による充実の演技。いやーいいお芝居でした。これぞウェルメイド・プレイ。

1991年初演当時は「IF」の設定であった陪審員制度も、いまや近い将来の決定事項(2009年までに裁判員制度導入)だ。だからといって日本人の本質はそんなに変わりはしまい。「論より情」「寡黙は美徳」「和をもって尊しと成す」「付和雷同」な文化背景を持つ私達。ディペートの習慣すらない日本に本当に陪審員制度が成立するのか-
を問うてるわけじゃ別に無いよ。だってこれはあくまでもエンターテインメント。観客は笑ったりはらはらしたりしながら至福の125分を楽しむのだ。そして見た後にいろいろ喚起されるものがあるのは本家の「12人の怒れる男」と多分同じ。

密室で休むことなく議論を続ける12人。シンプルな一幕もののストレートプレイ。なのにそこから立ち上がってくるのは、そこにはいない容疑者と被害者の息をもつかせぬ人間ドラマ。悪役、ヒーロー、お調子者、無責任、愚鈍な主婦 - でも役どころはひとつじゃない。主張と説得。懐柔と妥協。ひとりの陪審員の立場がくるくるとかわっていくディペートの面白さ(で、その合間には和気藹々とお茶を飲んでたりする)と企まずして人間性が顕わになる恐ろしさ。人間の多面性をあますところなく描き出す三谷脚本は本当に面白いな。

役者さんはみな素晴らしかった。初舞台の江口さんは、プレビュー公演時には不慣れさを指摘されてたが、3日に見た際には他の役者さんと比較しても遜色なし。存在感もばっちりで格好よかったよ。山寺さん(山ちゃんマイフェイバリッド!)も素敵。ストレートプレイは初じゃないのかな?理論派に見えて実は付和雷同な役どころをうま~く演じてました。立ち姿もステキだし舞台にどんどん出てほしい。生瀬さんと小日向さんは別格でうまい。温水さんもね。佇まいからして尋常じゃない稀有な役者さん達の渾身の演技を堪能する幸せ。ラストの生瀬さんの悲痛な叫びは身勝手な主張とわかっていても思わず説得されてしまうよ。浅野さんの50才を過ぎているとは思えない身体能力には毎回(前回はメルス)惚れます。筒井さんは風貌そのままに、気弱に見えて決して自分の主張は変えない頑固者を好演してました。

良い芝居、良い役者。見終わったときは観客もこの討議に参加していたように心地よい疲労に包まれている。幸せな気分でカーテンコールも終わって客電がつくと、山ちゃんのステキボイスで終演のご挨拶。「みなさまも良いお年を(年の瀬だよ!)」に思わず帰り支度の観客から拍手が起こってたよ。すばらしいお芝居をありがとう!

公演日程 2005/11/30(水)~12/30(金)

作・演出 三谷幸喜
出演(五十音順) 浅野和之、石田ゆり子、伊藤正之、江口洋介、小日向文世、鈴木砂羽、筒井道隆、生瀬勝久、温水洋一、堀内敬子、堀部圭亮、山寺宏一

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