私的ブランド考
■蛇足的な序
「これはこの秋冬の新作です」
過日、コートがほしいとワイキキのカラカウア通りのルイ・ヴィトンに出かけた。2Fのアパレルのコーナーでマネージャがマッキントッシュの新作を数点見せてくれる。「マッキントッシュはもう何点かもっているの。このブルゾンは素敵だけど特に新味は感じないわねえ」と気の乗らない私にマネージャーは胸をはって答えた。「マダム、今年のマッキントッシュは去年とは違うのですよ」「え、何が?」「なんと!洗濯できるのです」「ええっ!クリーニング可能になったのですか?洗ってもボンドとれないのっ!?」「ええ、テープの接着技術が飛躍的に進歩して、洗えるようになったのです」「いただくわ」とアメックスのプラチナカードを出す私を冷ややかな目で夫は見ていた。
店をでてカラカウア通りを歩きながら夫は嘆息した。
「おまえ、ボンド服(注1)によく何十万もだせるなあ」「だって洗えるんだよ!いままでは汚れたら台所洗剤でふいてたのに」「ほほう、おまえはクリーニングも満足に出来ない服を何着ももってるのか」「あんたのバーブァーのコート(注2)だって洗えないじゃん!」「あれはちゃんと英国にメンテにだせばクリーニングもされて戻ってくるんだよ!」
似たもの(バカ)夫婦なのである。いやいや言いたいことはそうではなくてね...
注 、上記の項はほぼ事実に基づいているけど冗談半分なんで本気にとっちゃイヤンなのです。
■起
そもブランドとは何か?
お客様が新規事業の策定をされる際などによく挙げられるお題目が「企業のブランド力を高める」だ。私がお客様に新規プロジェクトをご提案する際にも「的確なブランディングを行いより迅速な市場参入を..」なんてプレゼンで唱えたりもする。ここで論じられる企業のブランド力とは即ちターゲットとする市場においてその企業自身や製品ライン・サービスが広く認知され信頼されることである。このブランド力が強くなれば、新製品を世にだしても「この企業のものなら安心」としてスムースな購買行動に結びつくのだ。
ブランド力は一朝一夕に築かれるものではない。企業がある程度の時間をかけて築き上げていくものである。高品質の製品やサービスをそれに見あう価格で世に送り続けること。それが消費者を対象にしたものであるなら、彼らの認識を等しくするための適正な宣伝活動も必要だ。
恐ろしいことにこのブランド力は容易に低落する。長い間かけて築いた信頼もそれが人口に膾炙するものであればあるほど、一瞬で地に落ちることは昨今の様々な企業事故を見れば明らかだ。毀誉褒貶の激しい大衆を対象に長期にわたって強いブランド力を維持することが企業の永遠の命題なのである。
(以降/承転結の項が続きます)
■
注1 : ボンド服とは趣味のドール(バービーなどの着替人形)の世界の言葉。趣味のドレス職人さん達は同人活動の一環として、非常に手の込んだドレスを即売会やホビーショップなどで販売している。だが時折、フェルトをボンドで張り合わせたお手軽なドレスを作成している人もいる。それはボンド服と呼ばれドール服の世界でちょっと差別さているのだ。マッキントッシュは英国の有名なコートのメーカー。ヴィトンとのコラボで美しく実用性の高いコートを世に送り出している。防水のために裾や袖など布端の始末はテープを接着剤で貼っている。そして取扱説明書にはクリーニング不可。テープがはがれますとあるのだ。夫はヴィトンのマッキントッシュを高価なボンド服ととても馬鹿にしている。でも5年以上着てるけどボンドはがれないよ。
注2 : バーブァーは英国王室御用達のアウトドア・ブランド。オイル引きのコットンワックスを使ったコートは暖かく耐水性・耐久性に優れるが何しろオイルがすごいのでこれで車に乗るとシートが汚れると嫌われる。あと油を吸ったコットンって重い。夏の間英国本社に送ると、クリーニングしてオイル引きなおして戻してくれる。
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コメント
Nyaさんのブランド考がいよいよ始まりましたね!
とても楽しみにしております。
バーブァーのコート、HPを見ましたけど
とてもいいものだと私の本能がささやきかけてきます。
なんか、ほしくなってきました。
やはり、シーズン中は他の衣服と離してハンガーにかけたり
落っこちてじゅうたんにしみをつけたりしないように
気をつけて保管なさってらっしゃるのでしょうか。
私もこのあいだ、日比谷公園を散歩して松本楼で
お昼を食べてきました。
やはり、オムライスは私が作るのが世界最強だと再確認(笑)
投稿: 研太郎 | 2005.04.28 19:01
研太郎くん、コメントありがとう!
いやいやブランドの定義からはじめたらはまったはまった。最終的には共同幻想論=現代社会の基礎まで持っていきたいけどどうなることやらです。
バーブァーはねえ...重くて臭いです。以前ロンドンはポートペローのフリーマーケットにいったら、メンテしてないぼろぼろのバーブァーがいっぱい売っててなんだかなでした。うちではいつもyukの他のバイクのジャケットと同様彼の部屋に掛けてありますよ。クローゼットにいれるはの禁止。
あ、オムライスは私のよった日比谷茶廊のもちょっとした名物みたい~。是非お試しくださいませ。
投稿: nya | 2005.04.29 00:58