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ネットバブルの頃

新聞やテレビでは連日のようにライブドア堀江社長あーんどフジテレビ日枝会長ニッポン放送亀渕社長の談話が報道されている。なのでもう食傷気味なのだ。あまり大騒ぎせずに当事者同士でもちっと静かにやってほしいなと素人の浅知恵で思うのだ(もちろんあれは双方の戦略と理解しているが)。 いやいや時事にはあまり口をはさむまい。ここで言いたいのは堀江社長のカジュアルな服装を見ると喚起される思い出があるということだ。

数年前、インターネットバブル華やかなりし頃、私は仕事でベンチャー企業の幹部の方々に多くお会いした。彼らは一様に堀江社長ライクなカジュアル・ルック。綿シャツにチノパン。せいぜいジャケット。でも名刺でいただく肩書きは取締役とか専務とか。勿論ビジネスは非常にシビア。こちらの話にちょっとでも隙があると容赦なくつっこんでくる。生き馬の目を抜く世界で起業し生き残ってきた自負と気概、そしてオーラにデモシカ社員の私は完全に圧倒され何度も肝を冷やした。

いやいや言いたいことはそれでもなくって - ある日そんなベンチャー企業との打ち合わせ。例によって丁々発止のやり取りのあと、疲れきった私は同行の営業さんに日ごろの疑問を投げた。「どうして彼らはラフな格好してるんでしょうねえ。ストックオプションですっごいお金持ちなんでしょうから高級ブランドのスーツぐらい着ればよいのに」 すると営業さんはいった「ふふふ、彼らの腕時計に注意してごらん?」「へ?時計?」「そ、すっげー高い時計してるから」「...高い時計..(想像つかない)ロ、ロレックスとかですか?」「いやいや、もっと高い時計。何千万もする時計が世の中にはあるんだよ。」「えっ!何千万もする時計?(やっぱり想像がつかない)」「たとえば高級ホテルとかレストランとか、スタッフは客の質をどこで値踏みすると思う?服装じゃない。ポリシーでラフな格好をしている億万長者もいるからね。彼らは腕時計で客のお金持ち度を計るのさ」「ほーっ(感心)」

注意して見ると確かに高級そうな腕時計をしているベンチャー企業の幹部の方々は多かった。高級腕時計というと金無垢のロレックスしか思い浮かばなかった俗な私は、スイスの工房で作られた芸術品のような精緻な腕時計が存在し、それが家一軒買えてしまうほどの途方もない値段であることを始めて知って仰天した。しばらくして私もボーナスをもらった際に、奮発してその類の腕時計(もちろん X十万円ほどの普及品だ)を買ったのが唯一の影響だろう。夫に身の程を知れとえらい説教されたが。

そうしてネットバブルも過ぎ当時お付き合いしていたベンチャー企業の何社かは現在もかのライブドア社のように隆盛を誇り、何社かはネットの波の向こうに消えてしまった(またがんばれー) - 世の諸行無常をときどき自分の腕時計のダイヤのベゼルを眺めながら思ったりするわけなのさ。

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