NODA MAP「走れメルス」感想
観終わってふと自分に問うてみた。「青春」ってなんだったのだろう。ふりかえれば10代の日々ははるか遠く、観念ばかりが胸のうちに渦巻いて身を妬いたやるせなさ狂おしさはたとえいま思い返してもガラスに映った炎のように熱は感じない。ただおき火となり時折それが風にあおられて少し火の粉が散るだけだ。
ああ、わたしも大人になったものよとひとり肯いてみたり(大嘘)。
向こうの岸もこちらの岸もいずれも地続き - だってそれは私のこころの中だもの。遠くで悶える向こうの岸の私にむかっておおいおおいと呼びかける。その苦しみはただ単に思い込みなんだから安心なさいよと。世界はあんたなんかいなくても勝手にはじまって勝手におわるんだからと。
空ろな鏡をのぞきこみ世界はくるりと反転する - むかしひとりのをんながおりました。
芙蓉は浮遊。あちらとこちらの世界のはざまにふわりと浮いて母の形見の歌集から虚ろな言葉を紡ぎ続ける。
そしてひとりのをとこがおりました。
鏡の中にメルスはいない。メルスは自分の名前をいえない。零子に唆されて虚構の海をわたる(なんてあからさまな隠喩!) メルスはスルメ。咆哮する下着泥棒。かぶとむしはかぶとぬし。どっちにしたって死んでいる。芙蓉の言葉に絡めとられて里を焼く。
言葉のあそびは魔法のタロット - それは愚者の睦言のよう。
さあさうわ言はそれくらいにして - ここではっと目が覚める。現実への回帰?
ああ、あなた - 私は夢をみていたのでしょうか。そう長い夢を。 いいや、おまえ - これもまた夢。現し世は虚し世。ここにははじめから誰もいなかったのだから。
メルス嘘感想 - 完...
って石を投げないでくださーい。てなわけでメルス。なんてかわいらしいお芝居!近年まれにみる腑に落ちた野田芝居が超初期作品というのもわたしの感性が青いままなのを露呈してしまって恥ずかしいっす。しかしこれを20才の時に書いたのかよ野田さんは...(絶句) 行ってくれ行ってくれこのままじじいになって動けなくなるまで走れ野田さん!
マリちゃんはキュートで、腹筋さんのパワーマイムはさすがにないだろうと思ってたらお芝居そのものがパワーマイムぽかったよ(逆回し好き) 深津さんは素晴らしく勘太君もすごいがんばってた。下着泥棒にはみえなかったけど...(品があるんだよなあ。俯いた顔がぱぱそっくし..) 小西さんは安定株で、小松さん百太郎よかったなあ。いやいや惚れたのは浅野さんだけどね(なんて不可思議な動きでしょう!) 総代のメルスはキッチュなアイドルそのもので私はけっこういいと思ったけどなあ。
そしてそして、あー面白かった古田さんと野田さんの夫婦漫才(ほんとよ) いやー古ちんころがすころがす御大を。素笑いしちゃいけませんよ御大!って楽しそうだからまいっか。
メルスはとっても青くて古くて胸キュンになったお芝居でした。あれを書いた若い野田さんといまやろうとおもった野田さんもまたこちらの岸と向こうの岸にいるのだな。そしていつでも青春はないものねだりなのさ!
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