「SHIROH」千秋楽感想
いやあ、時間が経つのは早いな。12月7日から始まった「SHIROH」もついに本日帝劇の千秋楽だ。そして私は二度目の観劇。初日から日も浅い前回の観劇で既に十分な完成度を呈していた「SHIROH」が東京楽でどこまで化けているか楽しみに帝劇を訪れた。
前回は、あまりにも私好みの芝居に幻惑されろくな感想も抱けないままだった。今回は二回目だしもうすこし俯瞰的に舞台を見ようと思っていたのだが、ちょっと無理だった。何せ席が最前列センターという(FC歴長いけどこんな席来たのは初めてだ)舞台にのめりこめといわんばかりのこのお膳立て - しょうがない。冷静な観劇は来年の梅コマ(二階席なのだ)に持ち越すとして、今日は思いっきり舞台に浸ろうっと。
なあんて思ったら...やヴァイ。ふつーの新感線の千秋楽だ...。
豆知識。新感線公演の千秋楽はお祭りだ。みんなで歌を(「いい湯だな」だったり「ゴローにおまかせ」(初期のおぼんちシリーズ主題歌。作:山本正之!)だったり)を歌って踊ったりもちまきをしたり。そして何より板の上では役者同士がお互い落としあおう(芝居ができないくらい素で笑わしちゃうこと)としてたいへんだ。芝居がとまる~とはらはらしたことも一度や二度ではないよ。まあ、そんなちゃらけた千秋楽も新感線のエンターテインメントの一環!醍醐味なのだ。
それをまさか帝劇でやるなんてな。やっぱり前回はまだ劇団員・準劇団員があったまってなかったのか...千秋楽となればもう遠慮はない!板の上ではじゅんさんが暴れている~。素の台詞忘れちゃうくらいぐだぐだになって、なるしーや江守御大を台詞いえないくらい笑わせている~。何せ上川さんに「やっと新感線らしくなってきたな!」なんていわれてるし。しげちゃんも「猫にゃ~にゃ」で伊豆守に逆襲だ!じゅねさまものりのりだよ。「わしらはミュージカルを勉強しなおしにいってまいります。よろしければごいっしょに~」には爆笑した。
しかし....こんなふざけた舞台に芝居の神様は降りてこないよな..しゃあない、これはこれで千秋楽芝居を楽しんじゃおう、らっきーな最前列だしね。なーんて思ってたら、とんでもなかった。やっぱりこの舞台には神様が憑いているよ。ちゃらけた場のユルイ空気はすぐに、そこに立ち現われた熱狂の作品世界に呑まれていったのだ。
化けたよ - ほんとうになんて芝居なんだ「SHIROH」!この場に立ち会えた幸運を心から享受した。
脚本も、演出もダイナミックに変わったわけではない。なのにこのグルーブ感はなんだ。全ての役者のクオリティがあがって板の上により鮮やかな世界が築かれているのだ。
今回は中川シローは言うにおよばず上川四郎が神がかっていたよ。中川シローの歌唱力が芝居の根幹ならば、上川四郎は芝居そのものをその存在感と台詞(ニアリーイコール歌)でぐいぐいと引っ張っていく。彼の絶望、逡巡、決心、後悔、逃避、諦観、すべての心の動きが胸に響いた。
そしてリオの大塚ちひろちゃんも化けた!台詞なんてほとんどないのに、その表情、その仕草、そして歌。人間ではない象徴としての彼女が見事にそこにいた。
四郎に対しては中空から断罪を、そしてシローに対しては同じ目線で導きを示す彼女。リオについては、本当に四郎が救えなかった少女なのか、そこに彼女の意志はあるのか、ネットでもさまざまな意見がでている。私はリオの存在とは即ち天の御使い、もっといえばふたりの「SHIROH」を出会わせ、37,000の無辜の民をはらいそに導くための神の装置と解釈した。
お蜜を失い神に絶望したシローは暴走する。一幕の終わりで絶望する民衆を歌の力で励まし、生きる希望を与えたシローは、同じ力で民衆を殉教に導くのだ。- そう、彼らに勝利は訪れない。この戦いはあらかじめ滅びを約束されているのだから。では神は民を愛してはいないのか。37,000のまるちりは本当に神ののぞんだことなのか。否 - だからそこにリオが遣わされたのだ。弾圧され疲弊した無辜の民を安寧のうちにはらいそに導くための。
伊豆守の策に踊らされ、幕府の世を磐石にするための手段として用いられる彼らの反乱。しかに皮肉なことに伊豆守が望んでいたのは、「反乱の民の殲滅」そのものではなく「反乱の民を殲滅した」という(建前上の)事実だったのだ。この戦いにおいていちばん伊豆守に近いのは(というか彼とおなじレベルの視野を持つ)たぶん四郎だ。しかし四郎は後悔とシローに対する焦燥で判断力を失い、仲間を、そして寿庵を死なせてしまう。シローに導かれた殉教を覚悟する民に棄教を迫る彼からはすでに反乱を率いる救世主のカリスマは失われている。
同じ地平にたっていたはずなのに、一気に神の高みまで駆け上がってしまったシローと民衆に棄教を迫るまでに堕ちた四郎 - しかし最後に奇跡を行ったのは...
まこと "いとも尊き聖体の秘蹟はほめ尊まれ給え" なのだ。
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感想はこれくらい...っつーかやっぱ舞台に心かっさらわれて何も考えられないよお(;-;)
千秋楽、雪の帝劇を埋めた2000人の観客のアンコールは果てしなく続いた。上川さんに「あんたがた、もういい加減に帰んなさい」って怒られるまでね♪
てなわけで次は大阪、梅コマだっ! いのうえさん演出変えてくるかなあ(十三景 十兵衛の最期をぜひご一考ください!)
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カーテンコールの舞台ではつかささんがビデオで、粟根さんがデジカメで観客の様子を撮っておられました。粟根さんの写真はFCの舞台レポートに使うのかなあ..と思ってたらなんとその夜のうちに公式サイトに掲載されていました。みんな仕事はやっ!
[キャラ感想:のこりの劇団員withアクションクラブ編]
右近健一:かっちゃんだしー(意味不明) 開演前に流れていたQueenミュージカルは右近さんのお墨付きですかねえ。衣装はしげちゃんともども良くお似合い。
山本カナコ:カナコ姐さんお得意の少女キャラ...本当に化け物です。かわいい!まだまだコギャルファッションがいけるな
河野まさと:人間のちいさいサンボちゃんはいつもと違って裏切りではなく、小物だけど正しく戦う役です。お福さんと仲よさそうでかわいかった。でももっとお歌が欲しかったな。
川原正嗣&前田悟:川原さんは毎回江守御大にアドリブを仕掛けるという..なんつーかある意味大役でお疲れ様でした。あいかわらずACチームの殺陣は目にもとまらぬ速さですごいです。
中谷さとみ&保坂エマ:前回は気づかなかったが、今回は最前でキリシタン側にいることを確認。さとみちゃんの不思議な動きが変でかわいかったよん。
<ロビーに飾られたSHIROHギター。美しいギミックにLOVE>
<暮れの千秋楽名物餅まきの餅。最前列は実はもらいずらいのだ(役者さんみんな遠投するし)。あきらめてたら泉見さんがぽん!と手元になげてくれました。いいひとだー!上川さんの遠投がすごかったよん>
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コメント
nyaさん、またきてしまいました。うるみです。前楽感想もTBさせていただきました。
新感線の千秋楽羨ましいです!私はほんと日の浅いファンなのですが、前楽を取れたことはあっても千秋楽を観たことはないのです~!
ドクロの煎餅や、「七芒星」で餅まきをしたという話を聞くにつれ羨ましかったのですが、そうなんですか、そんなにはっちゃけちゃうんですか!
大阪は遠征なので最終土曜日に行ってきます。
次の荒神こそは楽をとりたいですっ。!
P.S.私はさとみちゃんが可笑しくって可笑しくってなるべく見ないようにしてました(^^;;
投稿: うるみ | 2004.12.30 04:01
うるみさん、コメントとTBありがとうございます!
上川さんに「あんたたち、いい加減に帰んなさい!」と怒られるまで満場の観客がアンコールを続けていてとても楽しい楽でしたよ。
私も大阪遠征で~す。ほんといつまでもみていたい舞台です。
P.S. さとみちゃん。GJ!でしたね
投稿: nya | 2004.12.30 12:13
はじめまして。ocheonと申します。
千秋楽のカキコを探してこちらにたどり着きました。
とっても楽しそうで本当に羨ましいです!
ぜひ、新感線の千秋楽に行ってみたいと思いました。
ありがとうございました~!
大阪にも行かれるんですねぇ。(羨望!)
投稿: ocheon | 2005.01.02 01:31
ocheonさん、コメントありがとうございます!
こんな拙い感想を読んでいただいてほんとうにありがとうございます。
「SHIROH」は初回見たとき、「こっ!これは凄い」と思って、すぐに大阪のチケットを押さえたのでした。お財布に痛い芝居です~(;-;)
千秋楽から何日もたったのに、まだ頭の中を「風の子供」や「握った拳に神は宿る」なんかがぐるぐるしていますよ。
投稿: nya | 2005.01.02 10:14