ドクロイヤー万歳! - 「アオドクロ」感想
この項思いっきりネタバレしていますので、アオドクロ観劇予定の方は読まぬが吉でございます~。
序
同じストーリーの芝居をキャストを変えて再演・再々演するというのは歌舞伎の例をとるまでもなく芝居の世界では当たり前のことだ。魅力的な物語、魅力的なキャラクターをさまざまな役者がさまざまな切り口で演じる。すばらしい演技は賞賛され継承され、時には独自の解釈が生まれ、繰り返し繰り返し演じ続けられるのだ。
- これは、オペラでも落語でもみんないっしょだ。それが普遍的な意味での「Play - 演じる」ということなんだろう。
だから、前の○○さんは良かった - それに比べて..というのは無意味な議論だと思う - とはいえ比べちゃうのが人情だけどな。いや昨今90・97・アカ・アオの比較がかまびすしいものでついね。
本文
さてさて、春のアカに続くアオドクロ、染五郎バージョンの捨之介だ。貫禄のアカ古田捨に対して染捨は...白かった。だって銀髪に白いキモノなんだもん。対する池内蘭の衣装は...水白チェック羽織はないだろう..(勿論水白は喪の意味なのであろうが)、アカ古田捨のウエスタン羽織と同じくらい納得がいかない衣装だったよ。
正直ちょっと不安だった。実際、捨之介自身の背負う業とそれへの諦観がうまくでているとは言い難かったが、それを凌駕するものがあった。「天魔王」の存在感である。
「髑髏城の七人」は脚本として弱いところがある。それは「天魔王」の動機だ。光秀を唆し本能寺の変を引き起こし、8年かけて英国と交渉して手を組み、関東に居城を構え数万人の兵を集め、満を持して秀吉・家康を攻める - 信長の影武者だった彼をそこまで駆り立てたものはなにか、それだけ周到に叛乱を準備したのにいざ英国が手を引いたら、周囲を全員惨殺し、ひとり逃げ出すという竜頭蛇尾な最後もずっと納得いかなかった。
しかし、染五郎の天魔王から古田版にはなかった「天魔王」の「魔」を感じたのだ。そうか、あれは戦国の世に凝った悪霊のようなものなのだ。そう思って得心がいった。「業を全て三途の川にながした」捨之介に対し「業を捨てきれずに呑み込まれた」蘭兵衛。それに対し「業に自ら呑み喰らわれた」天魔王なのだ。
膨れ上がった信長の業に呑まれ、その欲の赴くままに主を殺し忠臣を篭絡し、ひたすら戦乱の世を目指す。そこにはすでに人の意思はない、あえていえば妄執だ。そんな妄執にとりつかれた哀しい天魔王の姿が見えたのだ。
それだけでもアオを観た価値があった。
真面目な感想はこんなところかな。あとはキャラミーハーな感想(所詮キャラ萌えファンなのだー!)まず、狭霧の鈴木杏ちゃんは本当に17才ですかっ!所作も決まり声も通ってベテランの趣。末恐ろしいや。そして、アツヒロ忠馬もキュートで光ゲンジ(?)で素敵。じゅんさんの兵庫が馬鹿だけど頼れるアニキなら、忠馬は馬鹿でまっすぐで誰もがほおっておけない弟キャラ。極楽太夫とはカップルというより姉弟でした。川原アニキは渋キャラなのに出番少なくてもったいない...。ナイロンの三宅アニキよかった!歴代でいちばんダイナミックでスピード感あふれる100人切りはアニキの功績だ。よし子姐さんとカナ子さんのツインボーカルも大好き。これに聖子さんが加わったら無敵だ。これでこその新感線でしょう(;-;)。 高杉アニキのメカゴジラ(目が赤く光るのだ。そしてしっぽがキュート!)も好きです。舞台向きのいい俳優さんだよ。聖子さんはお目が高い。
そして池内蘭.....声良し、顔よし、姿良しの伊達男。立ち姿がもっさりしているのは初舞台ゆえの不慣れでしょう。前半はあれ、ミスキャスト?と思ったけど後半の鎧姿がきまりすぎ。どこのヒーローかと思いました。歴代の蘭と違って色や情はないが、あくまでストイックな蘭もありだと思ったのは後半の存在感ゆえ。きっとあと少しではじけるよ(水野蘭も後半の厚生年金になってぐーっとよくなったしね)
最後に ... 粟根渡京...もう巨大コロ助でたとたんに場内拍手喝さいで。「ああ、粟根蘭は愛されていたのね」と思いました。粟根さんのオタクキャラは大好き。そしてキレのある殺陣も大好き。だからもっともっと悪乗りしてくださいませ。
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