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2004.09.18

「ミス・サイゴン」感想

ミュージカルはそんなに得意ではないのだ。せいぜいがとこアンドリュー・ロイド・ウェーバーものくらい。(「オペラ座の怪人」は楽曲に惚れこんでロンドンのハー・マジェスティ劇場に通った)とっても話題になった東宝ミュージカル「エリザベート」も見ていない。

なのになぜ唐突に「ミス・サイゴン」。これはひとえに大好きな役者の橋本さとしさんが主役のエンジニア役に抜擢されたためだ。さとしさんは劇団☆新感線出身。体が大きく顔も長くてちょいと日本人離れしてるロックスター(笑)みたいな容貌(在団中はポール・スタンレーを名乗っていたのだ)。1997年の退団後はわりと地道にお芝居やテレビに出演しているが知名度的にはいまいちかな(さとしファンのひとごめん)。大柄で声もよく歌もダンスも(ちょいとはずすけど)華やかで舞台栄えする。お馬鹿っぽい役胡散臭い役がとても似合う(褒めてるのだよ)役者さんだ。 

そのさとしさんが東宝の看板ミュージカルのプリンシパルに大抜擢。クワトロキャストの他の三人は初演もエンジニア役で大御所の市村正親さん、新感線の先輩でベテラン筧利夫さん、ミュージカルでは定評のある別所哲也さんというそうそうたる面々。前評判も橋本さんて誰?みたいな感じでいまいちだった。ファンの間でも、こんな大舞台のしかもプリンシパル、ちゃんとできるのかなあと不安と期待が半々状態。

ところがふたをあけてみると橋本エンジニアの評判は上々。フランス人とベトナム人の混血でアメリカへの移住を夢見るポン引き役のエンジニアはさとしさんのもつ胡散臭い雰囲気にぴったり。いままでさとしさんを知らなかった人にも好意的に迎えられているようだ。たいへんに期待して帝国劇場に足を運んだ。

ところで「ミス・サイゴン」とはベトナム戦争末期から戦後までのサイゴン/バンコクを舞台としたアメリカ兵とベトナム人の少女娼婦の恋愛と別離といういわゆる蝶々夫人ベトナム版だ。 西欧人ならいざ知らず、アジア人の私たちには白ける要素のある物語なのでどうかなとちょっと構えていたが、そこはさすがに商業ミュージカル。ちゃんとエンターテインメントとして洗練されていたため、深みこそ無いがみている間は十分にはいりこめる物語になっていた。これがきっとブロードウェイ版だとアメリカ人は白人がベトナム人はアジア人が演じてもっと生々しくなっていたのだろうと思うけど。

そして幕があく - ミーハーだけどさとしさんに魅了された3時間であった。なんて立派になって..(うるうる)とまるで親のような気持ちで見た。「ほんとにさとしさんが主役なの~?」と半信半疑でついてきた夫も、最後のカーテンコールで堂々トリでご挨拶するさとしさんをみて「すげーよ!さとしさん!」と感激していた。

代表ナンバー「アメリカン・ドリーム」は思っていたより能天気ではなく、一夜の夢の儚さ寂しさに溢れたナンバーだった。お祭りの喧騒とそれが過ぎた後の哀愁。どちらもちゃんと表現できるさとしさんは素敵だった。
キム役の松たか子さんも良かった。前列で見てしまったため、登場時は17才の少女に見えなかったけど、すぐに気にならなくなった。わが子にむかってせつせつと歌い上げる「いのちをあげよう」の懸命さに打たれた。

びっくりしたのは、主役以外、クリス/ジョン/エレン/トゥイの出番が吃驚するくらい少なかったことだ。エレンの高橋由美子ちゃんなんてトータル10分もないのではないか?それでもさすがお歌の迫力で存在感(紅天狗はよかった~!)をだしていた。ジョンのメインナンバー「ブイ・ドイ」にもうたれた。いわゆる東宝ミュージカルのメインキャスト組、坂元さん、今井さんの歌の迫力はさすがだったよ。

というわけでたいへんに満足した(そして初演のCDもかっちゃった)観劇後、帝国劇場の駐車場から車をだしたら、そこにちょうどさとしさんのハーレーがあったのだ。すっげーチョッパーハンドル。さとしさん帝劇にハーレーで通ってるのだ~。かっこいいな!って思ったよ。

20040918.jpg
<カーテンコールで役者さんの投げたお花をキャッチしたのだ!>

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