Les huit coups de l'horloge
かちゃりと鍵穴に鍵を差し込む音。ドアノブが回って、ゆっくりとドアが開いた。
ぱたぱたぱたと軽い足音。まっすぐにキッチンの方に向かう。冷蔵庫やパントリーの開く音。時折漏れ聞こえる鼻歌。意味不明の奇声。
またぱたぱたと足音がする。ささやくような呼び声 「 -くん」
俺は寝た振りをする。もう少し近づいてきたら突然起きてびっくりさせてやろう。もう少し。
肩に触れる指。頬にさらりと髪のかかる感触。
さあ起きて、彼女の腕をつかんで -
■
ものすごい勢いで起き上がればそこには誰もいない。当たり前だ。一人暮らしなんだから。
朝の光に満ちた部屋にかんかんとセントラルヒーティングの音が響く。遠くの鐘楼で8時の鐘が鳴っている。
何の夢をみていたのだろう。憶えてはいないけれど、ひどく幸福で暖かな何かだった。ベットから降りて冷たい床に素足をつける。
俺はサイドテーブルに置かれていた携帯電話をとった。
「もしもし - 俺」
Fin
2007.4.10
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