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Le ruisseau

覚悟はとうにしているつもりだった。

人より恵まれていることは自覚していた。持って生まれた己の才に加えそれに溺れることなく精進する術も心得ていた。艱難の果てに掴み取った果実は決して甘いものではなかったが、一時咽を潤してさらに続く旅に備えるには十分だった。

そう、さらに先へ。それは過去から未来へと連綿と続く果ての無い音楽の巡礼だ -

気がついていた。彼女の中に眠る本物に。その奥底に眠るマグマの熱さに。あれが出口を見つけ噴出したらどれほど輝きどれほど轟くのか - この世界に。それはたかだかこの時代で得た俺のちっぽけな栄光など押し流してしまう程の奔流になる筈なのだ。

彼女を見出したとき俺は狂喜し、僭越にもそれを導くことができると思っていた。しかしそれはとんでも無い傲慢だと気づいたのだ。あの夏の地で。

狼煙は既にあがっている。

もう一度言う。

覚悟はしているつもりだったのだ -

Fin

2007.5.1

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