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L'aube

ぽっかりと目が覚める。見上げる天井は最近ようやく慣れてきたものとは違っていて、すこし混乱した。

(そうか昨晩 - ) 起き上がればそこは以前に住んでいた部屋だった。腕時計を見る。朝の5時 - 。

パリの冬の朝は遅く、窓の外は深い闇だ。昨夜はしたたかに酔ったが、不思議と宿酔にはなってはいない。

まだセントラルヒーティングのはいる時間ではない。着たまま寝てしまったコートのおかげで凍えずにはすんでいるが。それにしてもこの格好はなさけない。せめてコートと上着は脱ごうとベッドから起き上がった。

横に眠る彼女の眠りを乱さぬように - 静かに、静かに。コートとマフラー、上着を脱いでハンガーにかける。足音を忍ばせてキッチンに行って冷蔵庫から封を切っていないミネラルウォーターを取り出し、一気にあおった。

何かに追われるように、前に前にと進んでいる。日々思い知らされるには自分の未熟さ至らなさ。身のうちでは音が洪水のように溢れて出口を求めてもがいている。パリに来て2年、ようやく足がかりを得て、少しづつ手ごたえを感じはじめた時に - しくじった。そして、取り返しのつかないことをしたのかもしれないと焦れた。わかっている、これは自分で解決すべき問題だ。

そんなときに差し伸べられた手。縋る様にバスを降りた。

(確かに浅慮だったかもしれないが、それこそ自分が望んだものだ。あのすばらしい音楽!後悔はしていない。ただ - 悪いと思ったのも本当だ)

まるでいまの自分達はよるべない夜の海のただなかに漂う舵のとれない小船のようだ。頼りないオール1本で時折出会う浮標(ブイ)や灯台をたよりにどこともしれない港を目指して進んでいく。誰かに責を嫁することはできない。これは彼女も俺もただ一人で行わなければいけない作業なのだ。

それでも時折心を沿わせてともに進んでいければと願う心に嘘は無い。

ベッドに戻って、腰をかけ、眠る彼女の頬に触れる。いまはただその眠りが健やかであるようにと心から祈った。

Fin

2007.5.13(5.15改訂)

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