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La rêverie

夕暮れのキャンパス - 茜色に包まれた景色の中を少女が駆けて来る。栗色のおかっぱ頭が乱れるのもかまわずに全速力でまっすぐに私に向かってくる。

速度を落とさずにどすんと胸に飛び込んでくるものだから息がつまる。胸の中から私を見上げてにっこりと笑う。「 - センパーイ!まだガッコにいらしたのデスね。うれしー、一緒にカエりまショー!」 

ああ、これは夢だ。私は昔の彼女の姿を見ているのだ。珍妙なイントネーションと奇声と野放図な振舞い。それとは裏腹なやさしい声と可憐な姿。時折煌く奔流の様な才能。純粋で、そして盲目的に私を信頼していた -

それは遥か昔の物語。彼女との出逢いが私の人生を変えた。目まぐるしくて刺激的で苦しくも魅惑的な日々がはじまり、それは今に至るまで続いていて。

でも、と私は笑う。あんなおかしな少女はもういないな。いま私の隣にいるのは -

「あ、センパイ。目さめましたかー?も夕方デスよー。お夕飯のおかずを買いに行きまショー!」

- え?いま何か俺、夢みてた?

「えー何の夢ですかー?」

- 何ってそりゃ....あ、いや、何でもねー。

「わー、顔赤くしちゃって、あやシー! ひょっとしてエチな夢? やらしやらしーセンパイ、ぎゃはぁ!」

「何がエチだ!この変態!」 「ぎゃぼー」 「ほら、買い物いくぞ!」 「ひーカズオー!」

いえるものか。すげー虫のいい夢をみていたなんて。俺は行けないはずのパリでプロオケの常任になっていて - あろうことかお前もパリでプロのピアニストになっていて。

お前をフィーチャーしたオペラ座のコンサートは大喝采を浴びて、ステージライトの中のお前はすっかり大人で綺麗になっていて(しかもフランス語しゃべってたぞ!) ... なんてそんな都合のいい,,, え?

「Réveillez-vous! mon chéri. Vous avez mis une pièce de théâtre dans dernière répétition pour ensuite étape, n'est-ce pas? 」

- あ、あれ?

「へへー、すっかりフランス語うまくなったでショー!起きてくだサイー、今日もマチネがありますヨー、ほらほら昨日の初日の記事がLe Mondeに出てますヨー、何と大絶賛ですヨー!」

「....うまくねー .. 」

Fin

2007.3.31

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